驚天動地の呪い⑯


「悪鬼羅刹じゃないと、突破できないって……」

 言われて、小紋が渋面を作ると、

「その言葉通りだ。私が分析するに、羽間正太郎という男は攻撃性に長け、それでいてそなたと同じ〝三心映操の法術〟も持っている。ゆえに、攻撃予測による回避能力にも長けているというわけだ。それに……」

「それに?」

「それに加えて、彼には天に恵まれた戦略と戦術に長けた知性まで持ち合わせている。その三要素を全て持ち合わせていると見込んだからこそ、我が元の主君であるゲネック・アルサンダール様は、あの男に執心なされたのだ」

「ということは……? もしかして?」

「ああ。その三位一体が無ければ、クリスは救い出せん……」

 デュバラの攻撃技術は、他の追随を許さぬほどまさしく秀でている。

 そして、回避技術に至っては、小紋が会得したとされる〝三心映操の法術〟にがある。

「しかし困ったことに、あともう一つが足らぬのだ、我々には。あの羽間正太郎のような、瞬時に物事を計れる理にかなった戦略的技術が……。得てして奴は、時に行き当たりばったりの策を打ち出していると揶揄されることもあるようだ。だが、それでも彼はその場を難なくしのぎ、かなりの確率で作戦を遂行し切ってしまっている。つまりそれは、それだけ即興性の対処能力が高いという証左でもあるのだ」

「そう言われてみれば……」

 過去を思い振り返り、頷きを繰り返す小紋。

 その様子をうかがっていたデュバラは、

「かつて、私が所属していた組織には、唯一の弱点がある」

 話の論点を変えた。

「唯一の弱点!? そんなものが、あの組織にあるの!?」

「ああ、あるのだ。そこに所属していた私だからこそ分かる」

「そ、それって何? どこが弱点なの?」

「ああ、弱点と言っても、それほど弱みがあるわけではない、がしかし、それは付け入る隙と言うべき事柄なのかもしれない」

「早く言ってよう、デュバラさん! それで、もしかしてそれを要点にすれば、僕たちの今後の戦略が立てられるかもしれないんだよ?」

「あ、相分かった。そうあわてるな、小紋殿。して、かの組織の弱点となる要素とは」

「その要素とは?」

「彼らは、常に互いの連携によって事を成し遂げている。つまりは、常にチームの連携によって相手を地獄に貶めているということだ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る