驚天動地の呪い⑫
言われて、デュバラはいかにも答えにくそうに押し黙った。
それは、かの伝説の暗殺集団のエース格であった風格すら、どこかに消し飛んでしまった佇まいである。
そこで小紋はピンときた。
「そうか、そういうことなんだね……。それじゃあ、デュバラさんが手をこまぬくのも分からなくもないよ」
言われてデュバラは、
「な、何!? 分かるのか!? この私の胸の内が分かると申すのか、小紋殿!? 私はまだ、何も言っておらぬぞ?」
「分かるよ。分かりますとも、そんな分かり易い顔していれば、皆まで言わなくたってね。だって、デュバラさんほどの人が、そこまで委縮するとなると、理由はたった一つだもん」
「なんと!?」
「そうだよ。そのクリスさんの居所のバックに、デュバラさんの元のお仲間さんたちが付いているってことで、いいよね?」
デュバラは呆気にとられた。まだ、再会して数時間も経たぬというのに、彼女はこの約二年間のブランクも感じさせぬほど自分という存在を理解してくれている。彼は、それだけでも嬉しかった。
「普段は、自分の心の内を読ませまいとするのが、我々の職業病とでもいうところだ。がしかし、こうやって心許せる相手に、胸の内を察してもらえることは、どんな煌びやかな財よりも尊いものだ……」
「デュバラさん……」
小紋は思った。彼は、この約二年もの間、たった一人でかけがえのない細君を、死に物狂いで探し回っていたのだ。それも、世界中の裏社会の隅から隅まで。
そんな途方もなく神経をすり減らすようなことをしていながらも、彼はそれがさも当然のようにふるまっている。
そんな常人ではない彼ですら、許し合える相手に安らぎを求めているのだ。察するに、ここまでの道のりはさぞやひどく険しい道のりだったのであろう。
「そういうことだよね? クリスさんの居場所のバックには、あの〝
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