偽りのシステム242


 しかし、本当にそこでことが終わるはずもない。

 小型核二十基のうち、十九基が次元扉の向こう側に放り込まれた時点で、爆発までの残り時間が三分を切った。

 予定時間よりもかなり早い出来栄えに、

「とうとうあと一基ね、エスタロッサ中尉」

「ええ、しかし、そのあとの一基というのが……」

 実は、次元扉から一番遠い場所に仕掛けられた物だった。当然、そこにいの一番で向かったのが、突っ走るキラキラお姫様ことアイシャ・アルサンダールなのである。

「それにしても遅いわね。さっきから連絡しても、通信がつながらないし……」

 エナは、不安を絵に描いた表情でモニターを見つめる。

「彼女に何かあったのでしょうか? 折り返しの限界時間は、もうすぐだというのに」

 エスタロッサにも不安が付きまとった。ここまで来て、一基でも爆発してしまえば、彼女ら全員がその業火に焼かれてしまう。もう、次元扉を境目にしても、前門の虎どころか、後門の狼にまでその牙を剝かれている状態なのである。

「エナ・リックバルト。あなたの能力で、その場所を探ることは出来ないのですか?」

 そこでエナは首を横に振り、

「ここはね、第十五寄留跡地という特別な場所なのよ。いくら今のあたしが、電脳世界を自由自在に行き来出来るとは言っても、それは設備が整った場所に限定されてしまうわ。それが出来ていれば、最初っからどんなにアナログな仕掛けの爆弾だろうと、あたしがそこまで行って対処のしようがあったんだもの」

「なるほど。だから、あのお姫様はそれを承知で」

「ええ。確かにアイシャさんの行動は無謀だったかもしれないけれど、実は理にかなった行動でもあったの。特に、アイシャさんが向かってくれたポイントは、三次元ネットワーク通信を頑なに受け付けないガードの高い場所だったのよ」


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