偽りのシステム204
フィスキー少年の両親は、彼のその一言でかなりの衝撃を受けた。フィスキー少年が十三歳の時だ。
両親は、ともに大いに悩んだ。そして心当たりがあった。
フィスキー一家は、アメリカ資本が第一の第二寄留ノイマンブリッジに移住していたわけだが、当時、凶獣たちを故意におびき寄せて人を襲わせると言った無残な殺人行為が頻発していた。
背景を鑑みれば、凶獣をけしかけてテロ活動を行うといった行為も珍しくはなかった時代だ。だが、当時の治安警察の見地から察しても、この事件はどうも思想的でないという見方が一般的であった。
この事件の頻発によって、相当数の怪しい人物が治安警察に引っ張られることとなった。だが、それは全て証拠不十分で冤罪とされた。
しかし、そこでフィスキー少年の両親はピンと来てしまったのだ。
「お前がやったのか、フィスキー……?」
フィスキー少年は、父親に問い掛けられたが何も言わなかった。そして両親は、その言葉を最後に帰らぬ人となったのだ。
「無駄なんでごぜえますよ! 人間なんて生きているだけで無駄なんでごぜえますよ!! 人間、生きる意味なんて全く無いんでごぜえますよ!!」
次元扉に足を踏み入れた途端、息もつかせぬ間合いでアイシャの首筋にレーザーナイフが詰め寄って来る。
「はうっ……!!」
彼女はくるり体躯を反転させ、その凶刃から間一髪逃れた。
なんとも不気味な男である。他のパイロットと同じイシュトール・イシュⅣ型を操っている。にもかかわらず、この男の動きは人の死角に容易に侵入して来てしまう。
「無駄なんでごぜえますよ。何もかもが……。どうせ、人類はいつか滅びる。それなのに、なんでこんなに悪あがきが過ぎるのでごぜえますかね、人類というももは!? どうせ滅びるのであれば、今滅んだって明日滅んだって何も変わりゃせんものを……」
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