偽りのシステム198


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 エスタロッサは、ジャガイモの亡霊たちの動向を全く気にせず、中隊三百五十機を総動員して周辺の中継器やガイドビーコンの一斉潰しに当たらせた。

「さすがに黄金の円月輪が管轄していた第十五寄留だけあって、中継施設の数が尋常ではないですね。こういった事細かなインフラがあったからこそ、このような僻地であってもそれなりの繁栄が望めたのでしょう」

 彼女は一度はこの中継施設を潰しまくるのにためらいを感じた。この施設を転じて自分たちのものに出来れば新たなる牙城が築けると思ったからだ。

 しかし、それには更なる危険が伴う。つまり、見知らぬ敵の中継器を使用することによって、先ほど以上の〝乗っ取り〟が図られてしまうかもしれないということだ。

「今はまだ、このように敵が思うがままの映像を流し込まれているだけです。ですが、この中継器に私自らがアクセスを許すことによって、こちら側の何重にも仕掛けられたキープロテクトを外されてしまうかもしれません。もしそうなれば、私たちはあちら側の操り人形と化してしまうでしょう」

 言うなれば、エスタロッサが他の隊員たちの意識を操っていると同じ原理で、自らの機体も操られてしまう危険性があるということだ。

「ここは何より惜しいところですが、全ての中継器を潰してしまう方が得策だと考えられます。なにせ、私たちは通常の人間とは一線を画しているのですから」

 無論、このエスタロッサの判断は賢明なものであった。

 エナ・リックバルトは彼女が危惧していたトラップを、当然のように仕掛けている。万に一つ、そんな露骨な罠に、あの女中尉が引っ掛かるなどとは思っていないが……。

「しかし、これで何となくですが状況が見えてきました。なるほど、そういうわけですね。当初ここ第十五寄留は、見捨てられた廃墟だと思い込んでいました。だから、私たちはあの仕掛けも〝亡霊〟などと言わざるを得ませんでした。ですが、これからは違います。ここには、生きた何かが潜んでいます。明確に今現在生きた意思のようなものが感じられます。それが何かは知れませんが、良いでしょう。このエスタロッサ・ヒューデカイン。その隠された意思に対し、堂々と宣戦布告いたします。その挑戦、受けて立ちます!!」


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