偽りのシステム190
※※※
あれから二時間が経過した。
エスタロッサ七個中隊が、焼けただれた森や古びた塹壕の跡を目にするまで第十五寄留跡地の傍まで押し迫ったとき、
「こちらエリケンだ! エスタ坊や、聞こえるか? こちらは現在、敵軍……いや、第十五寄留の亡霊たちと激しく交戦中だ! これは、これまでに遭遇した凶獣とは違ってかなり手強い。よって、跡地への潜入は少し遅れそうだ。そちらの状況はどうだ!?」
かなり差し迫った上官の声色に、エスタロッサは少しだけ恐怖した。
「はい、何とか声だけが聞こえております、大佐殿。私に直接伝わっております。ところで、エリケン大佐殿。第十五寄留の亡霊とは何なのでしょう? もし、現時点での戦闘に差し支えなければ、詳細をお願いします……!」
エリケンの統率する八個中隊の行く手は、エスタロッサ七個中隊とは真逆の位置からの侵入ルートを取っている。それだけに、三次元ネットワーク通信がままならないこの状況下で使用できるのは、昔ながらのアナログ電波通信のみであった。
「……フフッ。このような原始時代以前の……恐竜時代を思わせる場所ならではの遭遇だな。そうだな、エスタ坊や? 我々はたった今、第十五寄留跡地の穴倉から這い出て来た奇妙な物体と交戦中である。この物体は初見であり、遭遇当初はさして戦闘力の高そうな物体には見えなんだがために、ややもすれば無害であると高を括っていたのだが、これがどうして厄介なことになってしまっている」
「そ、それで、その厄介な敵とは、どのような……」
「それが分からんのだ。この対象物を分析に掛けても、コンピューターは具体的な答えを出そうとしない。ゆえに、現時点では俺たちが何と戦っているのかさえ認識が出来ないでいる」
「な……。そんなことがありますでしょうか?」
「うむ、しかしだな。これが現実だ。今言った言葉の通りだ、エスタ坊や。我々は、過去の経験やデータに無いものを、これだと断定することが出来ん。認識が出来んのだ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます