偽りのシステム189


 エナは、同じ女として敵の中尉の気持ちが理解出来ないわけではなかった。

「だけど、そんな心の整理の仕方は間違っているわ! あの女中尉のこんこんちき!」

 エナは、色々とむかっ腹が立って地団駄を踏む。

 彼女とて、過去に羽間正太郎をその手に掛けようとしたことがある。だがしかし、無論エナ自身が正太郎を本当に憎んでいたわけではない。

 ゆえに、

「あの女中尉の頭の中は、自分というものが強すぎるのよ! 自分のためだけの理想が高すぎるのよ! 人も現実も、そんな自分のためだけに都合が良い理屈なんか通らないんだから!!」

「そうです、エナさん。あなたのおっしゃる通りです。あの女中尉さんは、自分の頭の中にある理想を他人に押し付けるために、現実を無理やり捻じ曲げようとしています。でも本来は、そんなことって、とても虚しいはず……」

「そうよ。アイシャさんの言う通りよ。どんなに表面上を取り繕たって、事実も現実もどうあったって書き換えられない。だって、そういう過去はもう現実のものとして機能しちゃってるんだから!!」

 エナは、自らの放った言葉を教訓として、これまでのアイシャに対する態度を戒めた。まさに、ここに向かって来るあの女中尉の姿は、自分自身の醜い心そのもの。自分自身がメラメラと燃やし続けた、あの黒い炎と同じものだったからだ。

「いいわ、アイシャさん。あたし、これで心置きなくあの女と戦える。そう、あの女こそ、あたしが倒さなくちゃならない敵なのよ。良い? この戦いは女同士の戦いよ。言うなれば、ここで顔を合わせる三人でなければ成立しない真の戦いというわけ。そう、女として戦う理由なんてこれ以上のものはないわ。それは、自分にとって大事な人を守れるか、それとも殺されるかの二つに一つの選択肢でしかないのよ!」


 ※※※



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