偽りのシステム158
言われて彼女はむくれた。誰のために自分は胸を痛めているのか。誰のためにこんな戦争が激化しているのか。
「あなたは、もうちょっと自分というものを見つめなおした方がよいと思います!」
いきなりのエスタロッサの激高に、
「な、なんだよ、セリーヌちゃん。何か俺、悪いことしたか?」
「そ、そんな、悪いことしたとか、そういった問題じゃないんですけれど、ただ、あなたは、この責任をどうお取りになるおつもりなのでしょうか!?」
「せ、責任? 突然何言ってんだ!? 俺ァまだ、キミとそんな関係になった覚えはないんだが……」
「な、なに訳の分からないこと言ってるんですか!? そうじゃなくって、私は、あなたが引き起こしたこの戦乱の責任をですね……」
「戦乱の責任だって? 突然訳の分からないこと言い出してきたのはキミの方だろう。そのキミの言い方だと、まるでこの俺が、戦乱の首謀者みたいな感じだが、一体なんで急にそんなこと言って来るんだ!?」
「だ、だって……。だって羽間正太郎。あなたって、何もかも分かっているようで、実は何も分かっていない。あなたには才能があり過ぎる。一見、破天荒そうに見えて、その実は繊細。それなのに大胆で……。それはきっと、あなたが普通の人以上に、周りの情報を広く取り入れられる能力を持ち、その広く取り入れた情報を確実な事実と認識して深く洞察が出来る。その上、その洞察で来た事実を、本人の肉体を通して確実に表現出来ているからだと考えられます。それはあなたたちネイチャーが、戦闘能力で格上の私たちに圧倒的な勝利した事実こそが何よりの証左だと断言出来ます!」
「何だよ突然怒り出したのかと思えば、急に褒め出したりして!? 余りにも緊張が続いたもんだから、何となくいきなりの情緒不安定にでもなっちまったか?」
「そうですよ! あなたと一分一秒でも長く時を過ごせば、おのずと情緒不安定にもなってしまいます! 大体あなたは生身の人間の分際でおかしいです!! この暗がりの中ですよ? それを努力次第や慣れ次第で敵が見えるようになるんなんて、誰が考えたっておかしいでしょう!? 常識的に考えて!! どう考えたって、肉体的に殺気が見えたりするなんて現実にあるわけがないじゃないですか!?」
エスタロッサは、正太郎をまくし立てた。自分の感情を抑えきれなかった。
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