偽りのシステム98


「ええ、ハッタリです」

 そこでエスタロッサ中尉は口角を上げて、

「確かに私たちの部隊は、かつてない程の甚大な被害を被りました。それはあのヴェルデムンドの背骨折りという男の戦略的力量と、稀に見ないほどの操縦技術があってのことなのは否めません。しかし……」

「しかし、何だ?」

「ええ、しかし……これを見てください」

 エスタロッサ中尉はそこで言葉を切ると、過去の映像データをエリケンの補助脳と共有する。

 そこには、これまで兵が攻め入った時に見た回線映像が映し出された。しかし、その殆どが彼らの死の直前のデータである。

「これがどうかしたのか、エスタ坊や? 皆、あのゲッスンライトの功罪で化け物マシンと化したフェイズウォーカーの出力の賜物によるものではないか」

「ええ、大佐殿の仰る通りです。それだけゲッスンライトの効果は絶大です。しかし、そこに穴があったのです」

「ゲッスンライトの穴だと? それはどんな?」

「それは、ゲッスンライトがまだ未完成の代物ということです」

「何!? ゲッスンライトが未完成品だと? しかし、現実にこうして敵側は俺たちの部隊を容易に退けているじゃねえか!?」

「そこなのですよ、大佐殿。そこがあのヴェルデムンドの背骨折りの狙いだったのですよ」

「何だと!? それはどういうことだ、エスタ坊や? 分かり易く、この俺に説明してくれないか?」

「ええ、では説明いたします。実はゲッスンライトの実用化は、まだ彼の駆る烈風七型と、その周りを取り囲む三機だけなのです。そう、通称ヴェルデムンドの背骨折り……羽間正太郎が指揮を執る一部隊だけの換装ということなのです」

「な、何だと!? 羽間正太郎の部隊のみの換装だと?」


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