偽りのシステム91
「エスタ坊や、どうやら見えて来たようだな」
エスタロッサが感傷に浸り込んでいると、大森林の向こう側に焼けただれた戦場の跡が見えて来た。エリケンのとぼけた声は続く。
「なあ、エスタ坊や。お前さえよければ、俺はこの作戦を変更しても良いと思っている」
「え!? 何ですって、大佐殿!? 作戦の変更とは」
「ああ、その言葉の示す通りさ。ここで〝
「そ、それじゃあ……敵前逃亡」
「ああ、その通り、自由意思って奴さ。無論、あのシュンマッハがそんな俺たちを放って置くはずはないがな」
「大佐殿、それは、このわたしの出方を試されておられるのでしょうか?」
「試してなどおらんよ。ただ、お前の考えを聞いてみたかっただけさ」
「わたしの考え……」
「そうだ、お前の考えだ。俺たちはもう充分過ぎるほど戦って来た。目を背けたくなるような数々の任務をこなして来た。だからさ。だから、俺はそろそろ故郷のニュージーランドに帰って、可愛い嫁さんでももらって牧場でも開きたいと思っている。そんな夢物語でも見ていねえと、もうやってられねえんだ。これじゃあ、俺たちは死ぬまで半機械人間ならぬ、半機械人形そのままになっちまうからだ」
エスタロッサも、エリケンの心持と変わらなかった。しかし、
「しかし、大佐。我々、第十八特殊任務大隊の全て者は、肉体を半分以上を機械に変えてしまっているために、繁殖能力を失っております。さらには、通常のミックスよりも頻度も技術も高いメンテナンスを必要とされます。それには、軍の高い技術を保持しているドクターが必要不可欠です。無論、それには多額の費用も不可欠です。以上のことから鑑みるに、大佐殿の仰るようなまともな人間としての人並みな生活を送ることは出来ないと考察されます」
エスタロッサは飛沫を飛ばしながら答えた。
「なるほどな。要するに、俺たちにとって人並みの幸せは、夢のまた夢ということ。そして、俺たちは何が何でも、あの核爆弾をこの地に仕掛けねばならんということで良いんだな?」
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