偽りのシステム85


「そうよ、あたしたちは取捨選択される側。それはまるで、分別場でくず鉄と黄金をオートマチックで仕分けるがごとく、ね……」

「それまで、始祖ペルゼデールは俺たちが考えもつかねえぐれえ長い年月の間に仕分け作業をして来たってわけだな?」

「うん、そう。あたしたちは勝手に始祖ペルゼデールだなんて呼んでいるけど、きっと他の文明を持った生き物たちは、何らかの別の名前で呼んでいたんでしょうね」

「そうやって奴は、何かの目的を持って数多くの文明を持った生命体を繰り返し滅ぼして来たんだ」

「だけど、今度の人類にはあなたという存在が居た。そして、別世界のあたしたちと同じ人類が誕生した中でも、あなたという不具合バグを発見してしまった。それは始祖ペルゼデールにとっても、かなり異例中の異例だったということ」

「ああ。奴にとって同じようなアリの巣の標本サンプルの中に、俺という不具合バグが発生したことで、一つだけ何かが連鎖的に変わっていたことを発見したんだ」

「そう、だから始祖ペルゼデールは、あなたを標本としてこの場所に幽閉した。この火星という誰も近寄れない場所に……」

「こ、ここは火星だったのか……。エナ、見当はついたのか?」

「ええ、間違いないわ。ここは火星よ。今、何とか繋がりにくい三次元ネットワーク上にアクセスして、大気の状態と日光の紫外線の含有量を解析してみて確信が持てたわ」

「なるほどな。じゃあどうするよ? この先、俺の身体に出逢えたとしても、火星の大気の状態じゃあ生身の俺の身体はもたねえ……」

「大気が薄いものねえ、この星……。こんな時、生身の肉体というのは不便なものだわ」

「それな。だからって、今後も俺ァギリギリの段階まであきらめねえぜ?」

「フフッ、いかにもね。あなたなら、そう言うと思ったわ、ショウタロウ・ハザマ。任せて、あたしに考えがある」

「考えだって?」


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