偽りのシステム80


 ※※※


「ねえ、ショウタロウ・ハザマ。もうここら辺でいいんじゃない? この先にアイシャさんが教えてくれた目印があるはずだから」

 普段着の様相から、一瞬にして軍服姿に変身したエナ・リックバルトは、緊張の面持ちで背後の正太郎に目をやった。

「ああ、そうだな。俺の身体は、アイシャの情報によれば、一人だけ別の格納施設に隔離されているって話だもんな。その隔離施設ってのがこれで合っているなら、ここで間違いねえ」

 正太郎の表情も少し緊張気味だった。もしこれでもっと回り道をするようであれば、敵襲に間に合わなくなる。いくらヴェルデムンドの背骨折りと呼ばれた彼であっても、今回の敵は相対するだけでも厄介なのだ。

「ねえ、ショウタロウ・ハザマ。あたしが立てた作戦は信じられないの? あなたの思い付きをヒントに、〝ノックス・フォリーのアマゾネス〟とまで呼ばれた元戦略担当のあたしが立てた作戦なのよ。それでも不安なの?」

「そうじゃねえよ、エナ。おまえの考えた作戦は確かにすげえよ。さすがは〝ノックス・フォリーのアマゾネス〟と言ったところだ。だがな、〝十八番おはこ〟の大隊は、ちっとやそっとの敵じゃねえんだ。あいつらは文字通りの特殊任務部隊だが、それは個々の能力を意味しただけだ。ただの特殊編隊じゃねえ。あいつらは、集団で掛かって来ても何もかもが特殊なんだ」

「集団でも特殊? それはどういう意味?」

「うむ……。何て言うか、あいつらは文字通り、もうただの人間じゃねえ。ううむ、なんて言ったらいいか分からねえが、もう人間の思考とは逸脱していると言えば良いのか……」

「もう、何だかよくわからない言動ね。あなたが何を言おうとしているか、まるで意味するものが伝わってこない。全くの不明瞭だわ。そんなんじゃ、まるで対処のしようがないじゃない」

「そうなんだよ、エナ。俺たちはいつも、対人間か、対アンドロイドか、対凶獣の訓練をして来た。だがよ、あれはもう別の生き物なんだ。別の生き物になっちまったんだ。あの肉体を半分以上を機械に変えちまった〝元人間〟てやつらはよ」


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