偽りのシステム67
エナの顔つきは真剣そのものだった。彼女は、彼女が育った寄留地を全て破壊されてしまったことにはらわたが煮えくり返っていたのだ。
もしやもすれば、あの第十三寄留ムスペルヘイム跡地に、このような囚われた人々が数え切れぬほど存在していた可能性がある。
それは今となっては計り知れぬことだが、それでも彼女は生まれ育った第十三寄留跡地があった足跡すら残されていない現状を嘆いていたのだ。
「ねえ、お願い、ショウタロウ・ハザマ!! もうこんな不毛な戦いだけは見たくない。こんなやり切れない気持ちになるのだけは嫌なのよ!!」
「お前の気持ちはよく分かった、エナ。だが、全て俺に任せてくれなんてそんな言葉はよほど軽々しくは使えねえ。それでもここは俺が何とかしなくちゃならねえのは確かだ。なにせよ、あのシュンマッハって野郎は、この俺の肉体を消滅させようとしてこうして奴らを、こんなブラフマデージャ跡地くんだりまで派遣して来たんだ。てえことは、この一件に関しては俺にも責任があるってわけだからな。やってやるぜ。それがどんなに困難な作戦であったとしてもよ」
正太郎の瞳が爛々と輝き始めた。それは、目の前のエナの期待に応えるためのものだけではない。ここに囚われて偽りの眠りにつかされている無数に並ぶカプセルの中の瞳がそうさせているのだ。
「それじゃ、奴らがここに到着する時間との勝負だな。それまでに俺の肉体を見つけ出し、そして戦闘準備にかからねえと」
「戦闘準備なら任せて。ここはあの〝黄金の円月輪〟が統率していたブラフマデージャ跡地だからね。まだ使える戦闘マシンが残っているはずよ」
「システムはまだ生きているのか?」
「ええ、大丈夫。何しろここにこうして大勢の人たちが生命維持装置の中で生きているんだもの。何も問題ないわ」
「なるほど。浮遊戦艦の動力を利用するってわけか」
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