偽りのシステム58


 言って、大膳は我に返った。

 このままシュンマッハに核兵器を使用されては、大森林ごと羽間正太郎もろとも燃やされてしまう。あの才能ごと灰にされてしまう。

 そう思った時、

「イバンゲル少尉、これは命令だ!! もう一度、旧ペルゼデールに潜ませている仲間と連絡を取り、かの地で暴動を起こすように仕向けよと伝えてくれ!!」

 言われてイバンゲルは首を傾げ、

「ぼ、暴動で御座いますか?」

「ああ、暴動だ。それも小規模クラスのを二、三か所別々にだ」

 そこにリゲルデが口を挟み、

「なるほど。旧ペルゼデールが不安定な状態なのを利用して、シュンマッハの気を国内に向けさせるのですな。もしかすると、それで少しは核攻撃の時間稼ぎになるやもしれん……」

「その通りです、中佐。ああいった手合いの男には、目先の動揺が効果的です」

「気が小さい男ですからな、シュンマッハは。しかし、それでさらににならなければ良いが……」

「いや、これは一時的な時間稼ぎです。これで解決しようとなどとは思ってはいませんよ」

「うむ、なるほど。確かに自らの絶対的保身にこだわるシュンマッハですからな。そこに気が向いてしまうのも当然だ」

「あの男が羽間君の居場所を特定させ、そこに攻撃を仕掛けようとする動機は何となくわかる気がする」

「ええ、ダイゼン殿のおしゃる通り。一番敵に回すと厄介な人物ですからな、ヴェルデムンドの背骨折りと呼ばれた男は……」

「つまり、現ペルゼデール・ネイションの首長であるビルシュテイン・シュンマッハは、心の奥底で彼の能力と実績を高く評価しており、その反面として一番煙たがっているということ」

「それは裏を返せば、自分自身の今の状況にかなりの重圧を抱えているという現れですな」

「うむ。だからシュンマッハは、狂気の行動に走ってしまったと言うこと」

「ならば、その動揺を一時的に国内へと向けさせることが得策だというわけですな」


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