偽りのシステム㉛


 尊大にして快活。そして堅朗――

 それが神の子〝シュンマッハ公〟であるとほのめかす現ペルゼデール・ネイション政府である。このプロパガンダが、全てのメディアを通して喧伝されたのだ。

 ただでさえ三次元ネットワークが発達したこのご時世である。これを脳内に直接伝達されれば、人々はそれこそが真実であると信じ込まざるを得ない。

 それは発信する側も同じことで、当のシュンマッハですら自らの言葉に酔い、自らの言葉に心酔して行った。

 浮遊戦艦との会談は上々だった。

 なんと驚いたことに、浮遊戦艦側から代表として遣わされたのは、以前に鳴子沢大膳の右腕としての手腕を買われていたエルフレッド・ゲオルグ博士その人であった。

「おお、そなたか、ゲオルグ博士!! そなたはかなりの先見の明があるとお見受けする!! 吾輩が神の子であると浮遊戦艦に進言されたのは博士なのですな。ああ、分かる、分かるとも! 皆まで申すことはない。吾輩の神通力さえあれば、この世界を思い通りにすることが出来る。この世界のみならず、宇宙全体をな!! そして行く行く我々人類は、永遠の命を手に入れ、楽園へと誘われるのだ! どうであろう、エルフレッド!!」

 使いの者たちに囲われながらも、エルフレッド・ゲオルグ博士は笑みを浮かべ、ただ頷くばかりであった。無論、使いの者は変身前の融合種ハイブリッダーたちである。

 悪童シュンマッハには夢があった。それは、この世界の画一的な支配と、永遠の命である。

 彼は、五年前の戦乱では〝反ヴェルデムンド運動〟の名乗りを上げて参戦していたが、実のところは自らの考えにそぐわぬヴェルデムンド新政府の意向に対して反発運動を煽っていただけなのである。

「同志エルフレッド。吾輩とそなたらはこれより盟友となり、やがてはこの世界を楽園に変えて行くことだろう。それには、あの美辞麗句をまとった闇のを葬り、そして反勢力となる数々の愚者どもを掃討せねばならん。無論、ご協力いただけるであろうな?」

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