偽りのシステム㉕


 再び戦闘の狼煙が上がった。今度もまた、もう一人の正太郎が先に仕掛けて来た。

 早撃ちの技である。再度、懐から抜き取られたクーガーM8000は、一秒の間合いも無く激しい白煙を上げた。必殺必中の弾丸は空を裂き、容赦ない軌道を一直線に描き真の正太郎の眉間を襲う。

 真の正太郎はそれを避ける暇さえなかった。だが、咄嗟に身が反応し、

「クッ……!!」

 レーザーソードでそれを打ち返す。

 弾丸は横に跳ね返って、壁の掲示物に穴を開けた。それは百合子手製のだった。 

 もう一人の正太郎は間髪を入れない。彼は横に駆け出したまま連続で銃を撃ち放った。弾道は真の正太郎の動きを予測したものである。真の正太郎は避ける術も無く、それをレーザーソードで打ち返すしかない。

 レーザーソードの出力が下がった。仮想空間とは言え、その性能は現実と何も変わらない。このように度々出力を上げ続ければ、やがてじわじわとエネルギー切れを起こしてしまうのである。

(やはり、それが奴の狙いか……!?)

 もう一人の正太郎の背後には、敵愾心てきがいしんに満ち満ちたたグリゴリが付いている。これは正にグリゴリの策謀だと感じた。今までグリゴリが、真の正太郎と対峙して来たデータを基に作戦を練って来たのだと考えられる。

(冗談じゃねえ、あんな奴が作った作戦にやられるっかってんだよ! まして……)

 まして相手は、自分の化身とも言うべき存在である。憎しみをまとっているとは言え、自分自身に殺されるというのははなはだ考えたくもない。

(受け身だけじゃ駄目だ! こっちから攻め込まねえと……!!)

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