偽りのシステム㉓



 向こう側の正太郎は、何やらぶつぶつ言葉を吐いていた。多分、サポートに回っているグリゴリとのやり取りがあるのだろう、その目は正に獲物を狩る為に茂みに潜む虎そのものであった。

(それにしても、毒を以て毒を制すとはホントよく言ったものね。こんなこと、良く思いつくもんだわ……)

 こんな時、エナが無粋に話し掛けて来る。

(お……おいおい、エナ。俺を面と向かって毒呼ばわりするなよ)

 真の正太郎はズッコケた。

(あら、だってあなたの存在は、この世界にとって不具合バグそのものなのよ。ということは、毒という例えだって間違いではないわ)

(だ、だからってよ、そりゃねえぜ……)

(そんなことより、来るわ! あなたにはあたしが居る。それを忘れないで!!)

 言われた途端、きれいに並べたてられた机や椅子が凄まじい音を立てて片っ端からひっくり返る。するとその間からもう一人の正太郎が突然現れ出て、

「貴様、消えてい無くなれ!!」

 いきなりレーザーソードの先が真の正太郎の脳天を捉えた。

 かと思った瞬間、

「そんなもの!!」

 真の正太郎は、すぐさま腰ベルトからレーザーソード二本を取り出しクロスしてそれを受け止める。

「貴様が居なければ! 貴様さえ居なければ……!!」

「俺が居たからって、どうだってんだよ!!」

 真の正太郎は、レーザーソードをクロスしたまま力ずくで天上に立ち上がり、もう一人の正太郎を身体ごと跳ね返した。

「貴様が居るからこの世界は逆転する!! 貴様が居るからこの世界は不自然な方向へ行っちまう!!」

 言うや、もう一人の正太郎はくるりと身体を反転させた。そしてどこからかもう一方の腕で拳銃を構えると、

「始祖ペルゼデールは、世の中を正しい方向へと導く!! 始祖ペルゼデールは、この宇宙を進化した方向へと導く!!」

 叫ぶや否や発砲した。

「グッ……!!」



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