偽りのシステム⑬
「あのゲオルグ博士が……」
エルフレッド・ゲオルグ博士――
彼は、行方不明になった鳴子沢大膳の片腕として存在し、旧ペルゼデールネイションの国家設立に尽力した一人だ。
彼の知能は非常に高く、知性にも品格にも秀でている。
羽間正太郎が、過去に受けたトラウマにより心が荒ぶったとき、彼の説得により平常心を取り戻したことがある。彼の卓越した医療技術と情報網は時として世を動かすほどであり、それにより鳴子沢大膳を陰ながら大いに影響を与えるに至ったのだ。
羽間正太郎が、〝黒い嵐の事変〟によって瀕死の重傷を負った時に、彼は身体の40パーセントを再生する手術を施したのだ。そのお陰で、正太郎は以前にも増して若さを取り戻し、さらには〝ネイチャー〟としての本分を思う存分発揮出来る身体を手に入れたのである。
「そう、あのゲオルグ博士よ。彼は、始祖ペルゼデールというシステムが作り出した過干渉を促すために造り出された存在。システムが都合良く円滑に運営されるために生み出された存在だったのよ」
正太郎は混乱した。自分の命の恩人である博士が、まさかシステムの操り人形だったなんて――。
しかし、思い当たる節はある。
以前、正太郎の理解者でもあった鳴子沢大膳から聞かされた話によれば、ゲオルグ博士は、大膳が若かりし頃に出会ったとある民間情報組織の一員であった。
その情報組織の影響を多大に受けた鳴子沢大膳は、逼迫しつつあった当時の社会状況を目の当たりにし、それを現実のものとして受け取って行ったのだ。
「なるほどな……。よく考えて見りゃあよ、何だかシナリオが上手く出来過ぎていると思ったんだ。状況が結果を作ったんじゃねえ。きっと、システムが描いたシナリオが結果としてピッタリ当てはまったんだ。そういうことだよな、エナ?」
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