偽りのシステム⑨
地響きは尋常なものではなかった。この世の物とも思えぬほどの縦揺れ横揺れを繰り返した。
「ぐっ……!! た、立っていられねえ!!」
「な、何よこれ……!? ここは現実世界じゃないはずなのに……!?」
二人の身体は、まるでピンポン玉が弾け飛ぶように縦に跳ね返っては地面に叩きつけられ、横に跳ね返っては真っ白な壁に激突する。
「何なんだよ、こりゃ!? エ、エナ、どうなってんだよ!?」
「あたしだって分からないわよ! こんなの分かるわけない!!」
彼らは仮想空間の中である。エナがこしらえた防御フィールドの効果さえ打ち消すほどの過干渉である。考えられるのは、始祖ペルゼデールと呼ばれるシステム自体が何らかの暴走を始めた可能性だけである。
「どういうこった、まだ揺れが収まらねえ……。こんな揺れ、現実世界に起こされたら街なんかひとたまりもねえぜ!!」
「そ、そりゃそうよ。この揺れなら、震度七の大地震なんてレベルじゃないもの!!」
「じゃあ、こんなことを起こせるのは……!?」
「し、始祖ペルゼデールのみね。きっと、あたしたちの居場所を特定しちゃったんだわ」
「クソッ!! せっかくお前が作った防御プログラムも意味が無くなっちまったってわけか!? また俺たちは、悪夢のような仮想現実に落とされちまうのか……!?」
正太郎は、少し前まで遠い記憶から再生されたつらい体験をしたばかりである。仲睦まじく添い遂げようとした過去の女性たちや、その子供たち。それらの人々を失くしたというジレンマの闇に、再び始祖ペルゼデールというシステムは葬ろうとしているのだ。
「いくら強靭な精神の持ち主のあなたでも、何度も何度も悲しい過去を見せられたらおかしくなっちゃうわ! 何とかここから逃げ出さないと……!!」
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