浮遊戦艦の中で338
しかし、言っている傍から化け物戦士たちは、二つの生命維持装置に心を奪われ、我を失くした様子で右往左往に争奪戦を開始した。
ある者は力ずくで相手をなぎ倒し、ある者は特殊な身体能力を活かして相手の息の根を止めようとし、またある者は口から火を吐き、巨大な顎から非常に怪しげな粘液を放出する。
だが、彼らの力量は互いに拮抗していた。傍から見ても、すぐには決着がつくとは到底思えない。
それゆえに、構内はさらに混沌を増し、まだ割られていなかったカプセルにまで被害が及んだ。そして、またそこから新たな戦士たちの覚醒を促したのであった。
「やはり、ここはどこぞの蒐集家が集めた戦士のコレクションです。しかし、こんなものを、どこから……」
「ううむ、我々の手の届かん存在によるものとでも言うのか……?」
リゲルデは、自らの手をじっと見て言葉を漏らした。今は、自分自身が異形の存在である。
彼らがこの場所に足を踏み入れたころは、まだ所々が静寂に包まれていた。だが、今となってはこの無限に広がりを見せる構内全体が戦場と化してしまった。
「気にするな、ジェリー・アトキンス。貴様の憶測が正しければ、いずれここはこうなる運命だったのだ。その生命維持装置とやらが切っ掛けでな」
「はい。しかし、その切っ掛けを作ったのが自分だということが、どうも……」
「ふん。貴様は所詮パイロット……。最前線で命のやり取りをする戦士だからな。この俺の役目とはまるで違うと言うことか」
「ミスターワイズマン……」
リゲルデは、後方で指揮を執る戦略家であった。その戦略家であるがゆえに、いつも大勢の他人の命のやり取りをする切っ掛けを担わなければならない。
「失礼しました、ミスターワイズマン。だた、わたしは……」
「何も言うな。それがそれぞれの役目というものだ。どちらが勝っているとか、どちらが優れているとか、どちらが大変だとかいう問題ではない」
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