浮遊戦艦の中で308


 これはいよいよ、あの夢うつつの中に登場した怪しげな集団の会話が現実味を帯びて来た。

(まさか……。他の次元世界の住人だとか、そいつらとの生き残りを賭けた戦いだとか、あれは本当のことなのかもしれん……。では、まさか。この俺の身体も……)

 ジェリーには、それについては一言も告げていないが、戦闘中に起きた不気味な感触がふつふつと蘇って来る。

 あの時、リゲルデは生き物のように迫り来る無数の雷紋に肉体を取り込まれ、そして意識を失った。その後の朦朧もうろうとした意識の中で聞こえて来た怪しげな集団の怪しげな会話。

 あの怪しげな会話は、とてもな内容ではなかった。

(他の次元世界の連中と合わさって、完全なる人間を作り出すとか……。常軌を逸したカルト教団の夢物語にしか聞こえなかった……)

 だが、この入り口に施された現在の人類のテクノロジー以上の物を目の当たりにされてしまうと、その可能性も否定出来なくなる。

「ミスターワイズマン、いかがいたしましたか? 確かにこういうのを見てしまうと、そう言うお気持ちになられてしまうのも分かりますが、ここは早く先を急ぎませんと」

 入り口で呆けたままになっているリゲルデを、ジェリーは振り返って煽り立てる。

「あ、ああ……。そうだ、貴様の言う通りだ。こんな物で驚いていたら、この先が思いやられる」

 覚悟はしていたつもりだったが、実際にその目で見るのと想像で語るのとでは気持ちが収まりが違う。このような格段に自分体の上を行くテクノロジーを目にするのは、次元渡航技術を目の当たりにしたとき以来だった。

(あの時も、実際に見た時はこんなものが現実にあるということが、しばらく信じられないでいた。そして今も……)

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