浮遊戦艦の中で303


「カプセル……だと? 本当に貴様はそんなところに何年も寝かされていたと言うのか?」

 リゲルデは暗闇の中、手渡しで松葉づえをもらい、それを抱きかかえるようにしてようやくその場に立つことが出来た。

「ええ、先ほどあなたの仰られたことを踏まえればそうなります。きっとわたしは十年近くも、この奥にある施設でコールドスリープ状態にあったのだと思います」

「コールドスリープだと、それは本当か? そんな大掛かりな施設がこの奥にあると言うのか?」

「ええ、その通りです。多分、わたしは何者かの手によって、わたしが入っていたコールドスリープ装置が解除されたのだと思います」

「お前だけがか?」

「ええ。私のほかにも、数え切れないほどのコールドスリープ装置がこの奥の施設にはあります。わたしはそこで見たのです。装置の中に眠りについた人々の姿を……」

「なるほどな。貴様は、十年前の渡航の際に何者かに囚われてここに眠りにつかされていたのだな。と言うことは、五年前の戦乱で活躍したジェリー・アトキンスというのは、もしかすればもしかすると……」

「もしかすると……何です?」

「うむ。もしかすると、他の次元世界の貴様だったのかもしれんな」

「他の次元世界ですって!?」

「そうだ。俺は、ここに来る少し前に、その他の次元世界の自分たちに襲われた」

「他の次元世界の自分たちに襲われたですって!? そんなことが……!!」

「いや、何も不思議がることはない。俺たちだって、こんな突拍子もない世界に渡航が出来たんだ。数多くのパラレルワールドが存在したとしても何ら驚くことでもない。それが道理というものだ」

「なるほど……。では、我々が次元渡航をして移住して来た一連の動きも、何らかの意図を含んでいると?」

「そのようだな。貴様の記憶からの話によれば、どうやら俺の居た世界と同じだったようだ。そんな俺たちの居た世界以外の戦闘マシンと一戦交えたのだ。誰かの意図が無ければ、そんなことはよもやあり得んよ」


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