浮遊戦艦の中で290
リゲルデは幾分かホッと胸をなでおろした。
自分の身体が、機械と羽根で融合された姿など誰も美しいとは感じない。どちらかと言えば機械人種に偏見を持つ身の彼では、それはなおさらのことであった。
(身体の中身の半分近くが機械であっても、ミックスという人種は外見は人間そのものだ。あのような化け物の姿であっては生きている価値など見出せん……)
リゲルデは、あの一連の出来事が悪い夢の中の勝手に描かれたストーリーであると思うようにした。たとえそうであっても、そうでなくても、思い込みをすることで現実から逃げ出したかったのだ。
彼が眉間にしわを寄せ天井を見上げていると、石塀で出来た部屋の板扉がギシリと音を立てて開いた。
「あら、気が付いたの? 随分顔色も良くなって……」
女の声であった。乾いた溌溂とした声。語尾があっけらかんとしていて、陽の光のまぶしさをどことなく助長せる。
「ふうん、さすがは軍人さんだねえ。体が丈夫に出来てるんだ。沼の湖畔で見かけた時には、あんなに憔悴しきってたのに、もう血の気が戻ってるなんて」
女は腕組みをしながら枕元を覗き込む。目を真ん丸にして、珍しいものでも見るかのように口元を尖らせている。
「こ、ここはどこだ? お、お前が助けてくれたのか……?」
リゲルデはようやく言葉を放った。声が出づらくて、思ったように言葉を出しにくい。どうやら随分と寝かしつけられていたようだ。
「そうよ。あたしがアンタを助けたの。だって、あのまま放って置いたら、これからずっと夢見が悪くなるじゃない?」
言って女はケラケラと笑った。褐色の肌に整った顔立ち。髪は栗色で長く、無造作に首元で束ねている。しかし、毛先はしっかりと綺麗に整えられている。取り込み窓からの陽光によって、その髪はいっそう輝きを増している。
「ア、アマンダなのか……?」
リゲルデは思わず言ってしまった。彼女はアマンダにどこか似ている。
「アマンダ? それ、アンタの女の名前? それとも奥さん? あたしの名前はシモーヌよ。アマンダではない」
髪の色や雰囲気こそ違うが、見た目が似ている。胸のふくらみ具合から、首から方のラインの美しさ。そして、ぽってりとした唇の濡れ具合まで。
「い、いや……。お前……いや、シモーヌ。き、君が俺の昔の知り合いに似ていただけだ。気にしないでくれ……」
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