浮遊戦艦の中で272


「な、何だ……。こいつらは、何を話しているのだ……」

 リゲルデは、強制回線から漏れ聞こえて来る不可思議なやり取りに聞き入っていた。

 運命は、いたずらに彼らを戦い合いへと導いて行く。謎の機体の回線は、このどさくさで開きっぱなしになっていたのだ。

「そ、そういうことか。話によれば、こ奴らは他の次元世界の俺だと言うのだな……。だから共謀してこの俺を……。し、しかし、まことには信じ難い話だ……。なるほど、だからさっきシュンマッハがどうのこうのと言っていたのか。あの傍若無人なシュンマッハも、他次元世界の己自身とやり合って生き残ったと? ふん、傍若無人で気が小さい以外のシュンマッハなどこれっぽっちも想像も出来んわ。……まあ、それを知ったからには、このままやられっぱなしには出来ん。この俺もあ奴らを返り討ちにして、俺の思い通りにしてやらねば腹の虫がおさまらん!!」

 軒並み巨木が立ち並ぶ大湿地帯はしんと静まり返っていた。それに対して、彼ら三名の思惑は激しく交差している。

 当のリゲルデは、マリダ・ミル・クラルインを最恐の魔女と称し、彼の愛人であったアマンダ・シャルロッテの仇討ちを画策している。

 さらに、他の次元世界から召喚されたもう一人のリゲルデは、謎の機体を駆りつつも、それ以外に召喚されたリゲルデを、凶獣の姿をしたリゲルデと共に討ち果たしたのだ。

 それは、自らの住む世界との因縁を断ち切るため。そう、次元同士の相互干渉を断ち切るための行動なのだ。

 そしてさらに、このヴェルデムンド世界に生を受けた凶獣のリゲルデは、もうすでに自分と考えの合うリゲルデを導き、他の次元世界のリゲルデ一人残して討ち果たす手助けをしていたのだ。

「この世界に、俺と言う存在は一人しか必要としない……と、そういうわけだな。なるほど理解した。要は、あ奴らを一人残らず闇に葬れば、シュンマッハのように他の次元世界からの干渉を受けずに好き勝手出来る力が手に入ると言うことか」


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