浮遊戦艦の中で234
フーリンシアの語気はさらに強まり、
「あの方たちはお怒りです。きっとこのままでは、あの方たちの大いなる力によって人類は滅ぼされてしまいます! もう私たちには時間が無いのです! この世界で、剣崎大佐が凶獣ヴェロンの遺伝子を組み込まれてしまったのであれば、ここはこれしかありません! このエクスブーストを火之神に添加して、一気に覚醒を図るしかないのです!!」
彼女の瞳に鈍い光など感じられなかった。全てが彼女の本心であった。
アロンソ上級曹長は、返す言葉がどうしても見当たらない。フーリンシアの話す内容は、自らの経験から言えばまるで事実ではない。しかし、
(もしやもすれば、本当にフーリンシア大尉は違う世界からやって来たのかもしれん……)
と思わざるを得ない真実味が彼女自身から感じられたのだ。
「アロンソ曹長。本来なら、私だって火之神にエクスブーストなんて添加させたくはありません。なにしろ火之神は、あの世界では私と大佐の間に出来た唯一の息子エルラドをモデルにして創り上げたのですから……。でも、エルラドの父親である大佐が凶獣の遺伝子に取り込まれてしまったのであれば、こうしてこの液体を添加して一時的にでも覚醒させてあげなければならないのです! そうでなくては、大佐の遺伝子をこの火之神に継ぐことが出来ないのです!!」
言うや彼女は小瓶のふたを開けた。そして、コバルトブルーに輝く液体の入った小瓶を斜めにすると、
「さあ、火之神……いえ、私の可愛い息子エルラドよ、この腐った世界に目覚めるのです。私と大佐が婚姻関係のないこの偽りの世界を潰すのです。そして、新たなる混とんを生み、新しい秩序をもたらすのです!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます