浮遊戦艦の中で232
「ええ、確かに私は火之神の生みの親です。ですが、私はこの子を地へ返してやらねばならないのです」
フーリンシアは真顔でそう答えた。どうやら彼女は、今までの天然風の女性の雰囲気とは一線を画している。
「地へ返してやらねばならない? 一体それはどういう……」
「どうもこうもありません。それが、始祖ペルゼデール様のご意志だからです」
「ペルゼデール様ですと……!?」
「そう、ペルゼデール様は、私の枕元に立たれてこう仰られた。この世界に生きる生物はやがてあの方達によって一掃される。だが、一つだけ生き残る道がある。それは、お前たち人類が比類なき進化を遂げ、あの方達に認められる事だ。それ以外、生き残る道は無いのだ、と……」
アロンソ上級曹長は、フーリンシアの言っていることがまるで理解できないでいた。ペルゼデール。比類なき進化。あの方たち。生き残る道――。
そんな今まで耳にしたことない語句をいきなり並びたてられても、それを理解しろと言う方が土台無理なのである。しかし――
「本来、あの方は私にとって旦那様になっておられたお方なのです。しかし、この世界ではそうではありませんでした。火之神は、私たちの住んでいた世界であの方と私の間に出来た唯一の子供でした。ですが、その子はこの世界では存在しないことになっています。なぜなら、私とあの方は夫婦ではないからです」
「何を言っているのですか、大尉!? 火之神があなたの子供? あなたの住んでいた世界? 一体何を言っておられるのか、私どもにはまるで意味が分かりませんが……。そして、あの方とは?」
「決まっているではありませんか。もちろん、あの方とは剣崎大佐のことです」
「け、剣崎大佐ですと!?」
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