浮遊戦艦の中で213
剣崎は、符丁でミコナス准尉に
フーリンシア大尉らの技師チームは、そんな彼の慌てぶりも目をくれず一心不乱になって注入作業に当たっている。
「フーリンシア君。すまんが、ここの作業は君たちに一任する。俺は全体の戦闘指揮を執らねばならん! 後は頼んだぞ!!」
剣崎は、フーリンシアが微妙に笑みを浮かべて
剣崎は、腕に備えた通信装置に向かって、
「ミコナス准尉。状況はどうなっている!?」
「はい。この艦の半径十キロメートル十六方位に斥候班が簡易レーダー網を仕掛けています。そしてその未確認物体の敵影の数はおよそ六十。それが、まるでこちら側の様子を窺っているかのようにグルグルと旋回を繰り返しています」
「ふうむ、これは俺の睨んだ通り……」
「大佐、それでは……」
「いや、まだ軽率なことは言えん。だが、調べておく必要がある」
「先ほどのご命令通り、情報班の草笛中佐にはケースA4の発動を申し上げておきました」
「うむ、さすがに君は仕事が早いな。しかし、このことは我々の中だけの話にしておいてくれ」
「了解です。それが私の任務ですから……。ですが、大佐……」
「何だ?」
「なぜ、そのようにお
「仕方があるまい。それが乱世というものだ」
剣崎は急ぎ足で艦橋へと戻った。このような時、ヒューマンチューニングされたミックスであれば、移動中にでも簡単に状況把握できる。しかし、女王マリダに忠誠を誓った人々のそのほとんどはネイチャーで構成されている。
とは言え、ネイチャーたる彼らが特段の優遇を受けたわけではない。何故か理由は分からぬが、自然にそういった感じでネイチャーたる人々がここに寄り集まったのだ。
(これも自然の成り行きだとでも言うのか……? この世界の生き物は、何者かの手のひらの上で踊らされているとでも言うのか……?)
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