浮遊戦艦の中で204


「なるほど。どうやらここにおられるほとんどの方々は、まだ誤解なさっておられるようだ」

 剣崎が待ってましたとばかりに言うと、

「誤解だと? それはどういうことかね? 剣崎大佐」

 ケネリン准将が言葉を返す。

「ええ、それに関しましてなのですが……。以前に羽間少佐が申していた通り、ここ数か月の間にこの世界の肉食系植物たちは比類なき進化を遂げたのだと断言できます。つまり、今までは生きた人間などにしか興味が無かった肉食系植物たちも、死肉と化した人間をも標的とし始めたということです」

「それはさっきも、君が言っていたことではないか。それがどうしたというのだ?」

「ええ、ならば、これを我々人間に置き換えてみましょう」

「人間に? 我々人類のことにか?」

「そうです。つまりですね、ケネリン准将。彼らももう馬鹿ではなくなったということです」

「馬鹿ではなくなった?」

「はい。馬鹿ではなくなったのです。彼ら……この世界の肉食系植物たちは、死肉の味を覚えてしまった。とどのつまり、死肉を捕食しても何の問題もないことを証明できたとあらば、そのゆくゆく先は……」

「ま、まさか……」

「ええ、そのまさかです。我々人間と同じに、家畜化することを考えるでしょう」

「なんだと!? まさか、あんな獰猛なだけが取り柄の中途半端な存在が……!?」

「フフッ、中途半端な生き物は、我々人類とて同じことでしょう。その上、人類など欠陥だらけと来ている。しかし、欠陥だらけな存在だからこそ、こうして我々人類は、その欠陥的不安から逃れるために、失敗と成功の積み重ねでその叡智を授かった」

「ううむ……。しかし、その話と今の人工知能の予測できない状態との話と、どんな繋がりがあるというのだね?」

 ケネリン准将が問い質したとき、剣崎の瞳が猛烈に輝いた。

「それなのですよ、准将。さすがの人工知能とて、今の彼らの進化の速さに追いつけていないのですよ」

「な、なんだと……!?」


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