浮遊戦艦の中で125


「かくも、サガウル殿の言う通りです。なにせ相手は人間です。ですから、その心も移ろいやすい。わたくしのような生まれも育ちも根っからの機械人形であれば、確証の無い情報など取るに足らないものと認識します。ですが、こう言っては失礼に当たるかもしれませんが、人間という生き物は虚構を本当の事だと言いふらすこともあれば、その虚構事態を信じてしまうことも多々あります」

「いえ、何も失礼などでは御座いません、陛下。それは我々人類の的を射た真実の捉え方です。虚構、偽り、嘘に、騙し合い……。それら全てが無ければ、我々人類の過去の歴史など何も成立しない」

「ええ、この戦いもそうです。全てはシュンマッハ殿の支配欲と権勢欲が作り出した虚構に虚構を重ね合わせた偽りの道理。それを信じてしまった人々の切っても切れないさが。なれば、このわたくしとて……」

 言うや、マリダは悲しげな面持ちで、

「よって、この戦いでだまし討ちすることを決意したのです」

 と、言い切ったのだ。

「陛下……。けがれなきアンドロイド女王の決意……」

 サガウルら親衛隊の面々や、女王としてのマリダに付いて来た家臣や兵士たちは、今までのマリダの嘘偽りの無い誠実な行いに魅力を感じていたのも事実。

 だが、マリダはこの戦いで戦略という騙し合いを演じ切って見せると今宣言したのだ。

「嘘をつけるということが、我々人類に与えられた最大の特徴とするならば、それをして見せるということは、陛下は最早、人を超えた限りなく人に近付いた存在におなりになられた……。いや、この事態を収めるために、陛下は……」

「サガウル殿。もし、この行為によってお気持ちが変わったのであれば、このわたくしを見限って頂いても構いません」

「いえ、陛下。私は、そのように苦悩なされる陛下に、尊敬の念すら禁じ得ません。陛下は、これで我々の取っ手の真の女王になられたのです」

「恐縮です、サガウル殿……。それでは作戦を遂行することにいたしましょう」


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