浮遊戦艦の中で103


 リゲルデ中佐は、渋面のままペルゼデール・ネイション第二寄留地を出立した。

 それは、兵百二十余名、フェイズウォーカーを含めた機動兵器四十五体、そして大型機動移動用車両三台という、女王討伐隊にしてはかなり少ない手勢である。

(シュンマッハめ……。あの統率の取れた女王親衛隊と、剣崎大佐率いる第二大隊相手に、この戦力では太刀打ち出来んだろうか……!! どうせ、この俺が討伐隊として遠征している間に、自分の周りに不意打ちが来ることを恐れてこんなヘンテコな編成を思いついたのだろう……。なんて気の小さい男なんだ!!)

 リゲルデ中佐は知っていた。ビルシュテイン・シュンマッハという男が、どのような男かということを。

 地球の北半球で言うところの、年の瀬も迫りつつあるこの時期は、ヴェルデムンド世界は一変して極寒の冬を迎える。その辺り一帯が緑色から一面の白色に変貌する一週間を称して、人々は〝緑の七日祭り〟と呼ぶ。

 その七日の間に、この世界に住む生き物という生き物は極寒に耐えうるための前準備をする。

 それは様々な森の木々や動物、昆虫、水棲生物、果ては我々人類においても当てはまることである。

 さらに言えば、機械人形たるアンドロイドや戦闘マシン、そして人間とアンドロイドの間の存在である〝ミックス〟に至っても〝緑の七日祭り〟を境に、それ相応の対応が迫られるのである。

(あの気の小さな男の考えることだ。どうせ、緑の七日祭り以前と以降の両方の予防線を張るために、自分の周囲を固めるだけの戦力を温存させているのだろう。主戦力であるフェイズウォーカーとて、余程の高性能機でない限り、局地戦闘用に装備を切り替えねばならんからな……。無理矢理に討伐隊遠征を指図しておきながらこの有様だ。奴には、人の上に立つ資格など無い……)

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