浮遊戦艦の中で98
拝金主義団体――
つまり、金の為なら人命も、倫理も、自然の摂理も、人類の未来があらぬ方向へ行こうとも全く
金満家たる彼らは、人類の歴史の上でも自らの私腹を肥やすことだけに人生のその大半を注ぎ込んできた。
そのような正常とも異常ともどちらとも言える人間の性質に、いち早く目を付けたのが、何を隠そう人工知能〝グリゴリ〟なのであった。
グリゴリは、人類がヴェルデムンド世界に移住するようになる以前から、拝金主義団体らが、
「わずらわしい国境を排除し、さらなる自由な経済活動を目指す――」
と、いかにも世のため人のためと称したキャンペーンを世界に向けて打ち出して活動していることに興味を持った。
人類の歴史は、言わば覇権争いの歴史である。覇権とは、何も武力で相手を制圧するだけが要ではない。いかに、相手に気づかれぬ間に生活の基盤を牛耳るかも大事な要素となって来る。
拝金主義者たちは、そんな人間の性質を良く知っていた。拝金主義者たちは、世界の金銭面と軍事面という表と裏の両方を牛耳ることによって、自らに都合が良い世界を作ることを標榜とし、それに従って尽力していた。
だが、それを良しとせぬのが、あのヴェルデムンドの戦乱で活躍した羽間正太郎らが所属した反乱軍である。
反乱軍は、何も強制的に〝ヒューマンチューニング手術〟を施行しようとしたヴェルデムンド新政府だけに反旗を翻したわけではない。彼らは、その奥に潜む〝拝金主義団体〟の標榜を打ち砕く目的をも持っていたのである。
グリゴリは、そんな一枚岩ではない人間の性質を研究し、
「人間ハ、とても愚かな生き物デスネ。口では自由というモノを求めナガラ、実は何かの〝縛り〟がないと生きて行けナイ。無意識二、その縛りを求めてイル……」
ということに気づいてしまったのだ。
「コノ性質を利用すれば良い。先ずは、その〝縛り〟を解こうとする者たちを、世界の第一線から排除するコトカラ始めヨウ……」
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