浮遊戦艦の中で78


 その時、

「イケマセン、鳴子沢リーダー。モウスグ、潜入チームガ、突入スル時刻デス――」

 人工知能〝疾風はやて〟が、いつも通りの平坦な口調で小紋をいさめた。

「うるさい、疾風! この役立たずのポンコツ工知能のくせに!! こんな時だけ物分かりの言い人間みたいなこと言わないで!!」

 小紋は絶叫するや、ホバーのスロットルを全開にし、機体を二分の一のサムライの正面に向けて突進させる。

「シカシ、鳴子沢リーダーガ、潜入チームノ、突破口ヲ示サナケレバ、潜入作戦二支障ガ起キマス――」

「そんなこと分かっているよ!! でもね、いい? はね、自分たちのちっぽけな感情の吐きどころを追い求めるためだけに、身重みおものクリスさんを連れ攫って行っちゃったんだよ!? そして、それが原因でデュバラさんも心を病んでどこかに行っちゃったんだよ!? それがあなたみたいなポンコツの人工知能に何が分かるって言うの!?」

「理解不能――。解析不能――。ワタシニハ、コレ以上、人間ノ感情ヲ、読ミ取ル事ハ、デキマセン――」

 その瞬間、人工知能〝疾風〟は、その機能の全てをシャットダウンしてしまった。いわば、自ら電源を落としてしまったのだ。

「こらっ、疾風!! 勝手なことをするな!! 人間をサポートするための人工知能のくせに、何てことするの!?」

 小紋はコンソールパネルにある人工知能ユニットの操作画面を幾度も叩いたが、どうにもこうにも全く反応しない。

 彼女はそれでも意を決し、ホバーノズルのスロットルを全開にしたまま、二分の一のサムライの懐に機体を突進させた。

「どうしちゃったんだろう、一体!? 疾風がこんな反応するなんて……。でも、アイツだけは許せない。アイツら、二分の一のサムライだけは絶対に許せない!!」

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