浮遊戦艦の中で58


 正太郎は、思わず奥歯を噛み締めた。が、その不安たるは的中し、また巨大子猫はみゃあみゃあと鳴き声を鳴らしながら、その場をすっくと立ちあがった。

「うへぇ、勘弁してくれベイビー。こちとら、もうお前さんの面倒でグロッギーだぜ!!」



 ※※※


 小紋は出撃の前に、首から下げた写真入りのロケットをぎゅっと握り込んだ。そして、大きく息を吸い込むと心を落ち着かせ、一度しっかり目を閉じる。

(羽間さん、マリダ、お父様、春馬兄さん、風華お姉ちゃん……そして、一真兄さん。僕はまたこの戦いで出撃します。どうか、僕を温かく見守っていて下さい……)

 小紋は、彼女専用にチューンアップされたフェイズウォーカーJTF-504㎞、通称【迅雷五型改】に搭乗するや、必ずこのルーティンを怠らない。

 このフェイズウォーカー【迅雷五型改】は、以前は海上自衛隊の主戦機動兵器であった。

 しかし、この世界の混乱により、各国はそれぞれの国は経済破綻を起こし、国家体制を維持することが出来ずに、軍事兵器なども管理維持することが不可能になってしまったのだ。

 彼ら抵抗組織〝シンク・バイ・ユアセルフ〟は、他の活動組織と同じように、それらの横流しされた軍事兵器を改良し、それを主戦武器として利用していたのだ。

「おお、鳴子沢リーダー、聞きましたぞ。何もリーダー自ら最前線にお出にならなくとも……」

 小紋がルーティンを終え、そっと瞼を見開いたと同時に、コックピットのモニターにシュミッター元大佐の焦燥に満ちた表情が浮かび上がった。

「ええ、大佐のお心遣いは嬉しいのですが、ここで僕が出撃しなければ、組織の士気が下がったままです。今、僕たちの組織は度重なる敗北と、浮遊戦艦による同朋の拉致によって縮小の一途を辿っています。だかから、ここは組織の代表たる僕が出撃しなければならないんです。どんなにお飾りな存在であっても……」

「リ、リーダー! それは違います! リーダーはきちんとその役目を果たされています! それ以上に事を背負い過ぎるのは危険です!! 先ほどの私の考えは行き過ぎました。よって、ここに私は謝りますから、どうかこれ以上は……!!」

「いいえ、大佐。僕はまだまだなんです。羽間さんに近付くためにはまだまだなんです!!」



 

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