浮遊戦艦の中で㉜
※※※
「鳴子沢リーダー緊急伝聞です!! たった今入った連絡によりますと、アメリカ、ネバダ州にある北米第四集団のセルゲイ・ダンプラ―少佐以下、多数のレジスタンスのメンバーが、搭乗していたフェイズウォーカーごと浮遊戦艦に
「えっ、何だって!? あのダンプラ―少佐までもが……!?」
その狭い一室にに集う十五人にも及ぶメンバーらは一様に目を見開いた。かと思うと、うなだれるように大きなため息をつき、皆一斉に肩を落とした。
鳴子沢小紋は、過激派組織〝フォール・アシッド・オー〟の決起と台頭を阻止すべく、自らの理念の下に、抵抗組織〝シンク・バイ・ユアセルフ〟というレジスタンスメンバーのリーダーを務めていた。
現在の世界の最大潮流である〝グローバル・リモート・サバイヴァー〟――つまり、各巨大人工知能と一部の支配層が掲げる電脳世界への移住計画は、
『争いも苦悩も痛みもない至高の世界』
という甘言を掲げて世界の人々を一手に誘導していた。そのことから潮流は留まることを知らず、彼女らの抵抗もむなしく世界は自ら仮想空間への移住が進行中であった。
その上、機械支配に反旗を翻した過激派組織〝フォール・アシッド・オー〟との激烈な争いは様々な被害を生み、今や浮遊戦艦への核攻撃すら
「とうとう北米方面の要だったダンプラ―少佐までが……。あの浮遊戦艦に捕まっちゃったら、もうあそこから出られる方法は無理矢理乗り込んで奪回するしか方法がない。でも、こっちは武器も人材も乏しい状況なんだよね……」
険しい表情で円卓上の世界地図を睨みつける小紋。それに対し、
「鳴子沢統括リーダー。もうこうなれば我々も先手を打ち、イスラム圏の各国の軍部に申し出を打って、
この組織の参謀役であるエリック・シュミッター元米国陸軍大佐が静かな口調で提言をする。彼の声は低く穏やかで、ざわつき加減の参謀本部の雰囲気を一瞬にして落ち着かせる効果がある。
「だけど大佐。それじゃあ、またあの国に借りを作っちゃうことになるよ? 以前に要請をしたときだって、その後の返済要請でこっちも相当な大打撃を被っちゃったわけだから、そこは慎重にならないと……」
「確かにそれはおっしゃる通りですな、鳴子沢統括リーダー。しかし、ここは我々の組織の台所事情を鑑みて、それしか方策は残されておりません。なにせ、我々にはまともに戦えるフェイズウォーカーにも数限りがありますし……。ここは他の陣営の力を頼るしか方策は……」
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