フォール・アシッド・オー77
「ああ、その通りだ小紋。私はあの時、この建物の中からお前たちの危機を知り、咄嗟にこの中にあった爆薬を仕掛けて退路を示したのだ。何しろ、このピンク教団にお前たちが乗り込む情報を流したのは、とうの本人――白狐のヴィクトリアなのだからな」
「なんだって!? ということは、あの人は最初っから僕たちを
「その通りだ。あの女は、お前たちを嵌めた。仲間に取り入れるための名目として、このピンク教団の敵情視察をさせたのだ。だが、その情報はヴィクトリアのコネクションによって故意に教団側にリークされていたのだ。それを知った私は、何とかこの教団の建物に乗り込んだのだが、これこの通り私はお前たちのように腕に覚えがない。だから咄嗟に建物内にあった爆薬を仕掛けてあの部屋まで誘導したのだ」
「春馬兄さん……」
「そしてお前たちが、あの二分の一のサムライと出くわしてしまった。またそれと言うのも、あの女の差し金だ。何しろ、あの女はこの私の目の前でそれを言い放ったのだからな」
「じゃ、じゃあ……もしかして、白狐のヴィクトリアは、兄さんを試したってこと?」
「ああ、多分そうだろうな。もし、お前たちが何らかの手助けによって危機を回避できたともなれば、きっとあの女は私を大いに疑うことだろう。妹思いの小賢しい潜入者であったとな」
「なんて用心深いんだろう、あの人は!! 僕たちの前では、兄さんを自分の片腕のような言い方で紹介しておきながら、実はそんな片腕にまで鎌をかけているなんて!!」
「フフッ、仕方ないのさ小紋。あの女は、そうやって生きてたのだ。逆を言えば、そうやって来なければ生き残って来られなかったのだ。あのような過激な組織を立ち上げ、そして存続させるにはそれほどまでに用心深くなければならんのだよ。なにせ、あの女は今の世情に対して復讐を行おうとしているのだからな」
「せ、復讐!? 復讐って何!? 春馬兄さん!!」
「文字通り……いや、その言葉通り復讐だよ。あの女は、この世界に対して復讐として戦争を仕掛けたかったのだ。いや……もう宣戦布告を打ち出してしまったのだ」
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