フォール・アシッド・オー71
デュバラが小紋を促すと、
「駄目だよう!! 今、デュバラさんが
融合種は、暗闇の中では目が利かないのが弱点である。ここで彼が変身して外に飛び出したとしても、無事ヴェロンの猛攻を避けて逃げ出すことは不可能に近い。
「ではどうしろと言うのだ!? これでは八方塞がりだぞ。ここは俺に任せて……」
「それは駄目だよう!! それじゃ、デュバラさんだけ危険な目に遭わせちゃうもん!!」
二人が言い争う中、建物のそこら中に火が回り、天井や壁は崩壊の一途である。
小紋は周りを見渡すが、どの出入口も完全に火の海と化している。あらゆる小窓らしきものも調べたが、小柄な小紋ですら通り抜けられる幅もない。世界マカロニ教団の建物は、もう崩れ落ちるしかない段階まで来ている。
「こんなんじゃ、クリスさんを助けるどころの話じゃない……」
小紋は目に涙を溜めた。ここで業火にまかれ、その身が灰になろうとするこの間際になって、たくさんの無念がまかり募って来る。
「せ、せめて……せめてもう一度だけでも、羽間さんに会いたかった……。言葉を交わしたかった……」
彼女の心からの本音である。ここでデュバラが融合種に変身したとしても、さして意味などない。凶獣ヴェロンとの融合種なだけに、彼の融合種の身体は非常に火に弱い。この業火の中では、その力を存分に活かせないまま焼け死ぬ確率の方が高いのだ。
この状況にして、
「もうだめだ……」
と、二人が諦めかけた、その時であった。
「おい、小紋!! こっちだ!! 早くこっちに来い!!」
小紋ら二人の背後から声を掛けて来る者があった。
「えっ? は、春馬兄さん!! 春馬兄さん!! な、何でこんなところに!?」
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