フォール・アシッド・オー52


「し、しかし……!!」

 しかし、二分の一のサムライの攻撃は理想のみでけ切れるものではない。事実、デュバラの衣服は裂け、至るところから打撃や裂傷による鮮血が滲み出して居る。

「デュバラさん、一人じゃ無理だよ!! 僕が居ることも忘れないで!!」

 そこに小紋が割って入り、怒涛の如き攻撃で攻め入る二分の一のサムライの手足を電磁式トンファーで叩き付ける。

 小紋のトンファー術は攻防一体の早わざである。見るからに非力であり、かなりの小柄である彼女にとってトンファーという武器は理にかなっている。蜂が刺すように迫り来る二分の一のサムライの手足は、それぞれが不規則な軌道を描きながら小紋に襲い掛かる。しかし、彼女はそれをトンファーで受け流すと、L字の先端部分をクルクルと器用に回しながら今度は木の葉のようにひるがえるサムライの頭部に打撃を加える。 

「クゥッ、やるな、この小娘めえ!! テメエもこの三日月野郎と同罪だ!! テメエもコイツと同じ匂いがするんだよう!! テメエみてえな奴らは、この俺の大剣で八つ裂きの刑にしてやる!!」

 二分の一のサムライの手足や頭部、胴体はさらに動きを強め二人に縦横無尽に襲い掛かる。

「小紋殿、気を付けるのだ!! こ奴は武器を持っていない部分をおとりにして、手に持った大剣で俺たちにダメージを食らわすつもりだ!!」

「分かってるよ、デュバラさん! この人の攻撃は目くらましをブラフにした大剣の一撃必殺だもの! 戦略なんかあるようで本当は中身なんかスカスカだもの!」

「なんだと、この野郎!! そうやって分かったような口ぶりで馬鹿にするような所なんざ、正にエリートって感じだな!!」

「ぼ、僕はエリートなんかじゃない!! だからこうやってレジスタンスを作って、あなた達の横暴な支配に対抗しているんじゃないか!? そうやって自分を被害者ぶるのはよした方が良いよ!! そういうのは本当にカッコ悪いよ!!」

「俺のどこがカッコ悪いってんだ!? 俺ァ、ようやくこの力を手に入れた。ようやくカッコの良い身体を手に入れた。そしてみんなから凄ぇ奴だってあがめられるようになったんだ! 二分の一のサムライは最強だって恐れられるようになったんだ!! それのどこがカッコ悪ぃってんだよ!!」

「ううん、そんなの全然カッコ悪いよ!! ここに居るデュバラさんの方が断然何百万倍もカッコ良いし、僕の尊敬している羽間さんの方が何億倍もカッコ良いんだからね!!」

「ハザマ!? もしかして、あのハザマ・ショウタロウのことか!? それなら俺も知ってるぜ?」

「羽間さんを知ってる? ど、どうして……!?」

「どうしたもこうしたもねえよ!」

 二分の一のサムライは言ったん攻撃を止め、バラバラになった自分の肢体を元通りに人間の姿に戻すと、

「ほら、この俺がそのハザマ・ショウタロウだからだよ」

 

  

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