フォール・アシッド・オー㊷
デュバラは岩にもかじりつく思いだった。この崖っぷちの状況で、ようやく凶獣ヴェロンの王ヴェリダスに手を差し伸べられたことを実感している。
《我が半身デュバラ・デフーよ……。汝は、言いながら自分の立場が全てだと考えておる……》
(な、何!? この俺が独りよがりだとでも言いたいのか!?)
《
(解せぬ、全く解せぬ!! 我が半身ヴェリダスよ。この俺は今の今でも自分の為だけではなく、クリスや小紋殿、そしてクリスの中に宿る赤子の命の為に戦っているのだ!! それで独りよがりだなどと……それで我がことだけに傾倒しているだなどと申すのか!?)
《然り、我が半身よ……。そして、さにあらず我が半身よ……》
(そうであって、しかしそうでないだと!? 申しておる意味がまるで分からぬぞ、我が半身ヴェリダスよ!?)
デュバラは焦るが余り、語気が一段と強まった。この期に及んでは致し方ないというところか。しかし……
《我が半身デュバラ・デフーよ……。汝は確かに自分以外の者の為に戦っている……。だが、今はそれしか見えておらぬ……》
(な、なんと!?)
《然り、我が半身よ……。汝は、大切なものを守りたいと思うが余り、今一番見なければならぬものを目に入れておらぬ……》
(今一番見なければならぬもの? も、もしかしてそれは……目の前の敵!?)
《然り、我が半身よ……。だが、さにあらず……》
(しかしそうでないだと!? では何なのだ!?)
《然り、半身よ……。さすれば、それは周り回って己自身のこと……》
(俺自身だと……!? 我が半身ヴェリダスよ! そなたはこの俺を独りよがりだと
《然り、我が半身よ……。汝は、戦いの中で一番見失ってはならぬものを見失っておる……。それが己自身なのだ……。己自身はその思考の出発点……。己の器量、己の立ち位置を知らねば、相手を測ることなど出来ぬ……。ましてそれを知らねば、己の周囲の者などを守り通すことなど到底不可能……》
(な、なんと……)
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