フォール・アシッド・オー㉝


 六道邪神烈波りくどうじゃしんれっぱ――

 彼の作り出した光輪は目にも止まらぬ速さで回転し、六芒星ヘキサグラムの編成で対象人物の身体全体を完全に取り囲む。念動力で操作された一枚の羽根は高速で回転させられることにより、非常に正確で、非常に鋭い切れ味を持ったエネルギー体として相手に途轍もないダメージを与えるのである。

 その高速回転された数多の羽根が幾何学的で無機質な軌道を空間に描くことにより、対象物に得も言われぬプレッシャーを与える。そんな不可思議な状況を見て相手の心が委縮したところを四方八方から取り囲んで対象物を地獄の底へと貶める技なのである。

 しかし、この技は自らの身体の一部を使用するのと同時に、いかんせん体力の消耗が激しい。この技に使用する念動力がその原因の大半を占める。そう、念動力とは言っても、今の概念で言う超能力などの超自然現象と言われる物とはまるで違い、これはデュバラ・デフーと融合を果たした戦闘人工知能〝パールバティ〟の意思が、同じく融合を果たした凶獣ヴェロンの王の一部分を多大なエネルギーを利用して操作しているからだ。

 よって、この技を使用すればおのずと体力の消耗が激しくなる。何度も使用すればいつかは力がついえる。果たして中長期戦においては非常にリスクの高い技なのだ。

(しかし、今ここでこの技を使用せねば、こ奴を騙すことは出来ん。この如何いかんともし難い状況であるからこそ、今はこの技を本気で打たねばならんのだ。さあ行くぞ、二分の一のサムライ!! 今こそ我が必殺の死を呼ぶ秘技を受けてみるのだ!!)

 デュバラの念は硬い岩をも通す。かたくなに閉じられた二分の一のサムライの防御の構えを、その光輪の風圧によって嵐になびくトタン板のようにビリビリと歪ませてゆく。

 それでも二分の一のサムライは少しもひるまなかった。あたかもいにしえより地の住民に崇められ居る大木のように微動だにせず、その構えを一向に崩そうとしない。

(なんという頑強な肉体。そしてなんという強靭な精神!! ここまでしてもたじろぎ一つ見せぬとは何とも見上げた奴よ。しかし……)

 しかし、これほどの物を見せられて心が揺るがぬ者がどこに居るであろう。デュバラは心の中で雄叫びを上げ、さらに幾何学的な軌道を描く光輪に熱を込める。



 

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