不毛の街⑬
「勘違いするなよ、小紋。私はお前の思うようないかがわしい考えでこの案件をこなしているわけではない。我々、地球人類の将来の事を思ってだな……」
「ハイハイ、分かりました……。弁解はもう結構だよ。どうせ、その女の人だって若くて綺麗な人なんでしょう?」
「ほう、良く分かるな、小紋。お前、私のパトロンにして依頼主でもある〝白狐のヴィクトリア〟と知り合いだったのか?」
「そんなわけないでしょ!! ……っていうか春馬兄さん、依頼主の名前を部外者に軽々しくばらしちゃダメだよう!!」
「そ、そうか。つ、つい……。お前たちなら彼女の存在ぐらい知り得ていると思ってな……」
春馬は至って真面目である。彼は本当にそう考えている。
そんなやり取りを傍から窺っていたクリスティーナは、
「ねえねえ、小紋さん。これは失礼かもしれないけど、あなたのお兄さんって、ド天然って言うよりかなりのポンコツじゃない? これでよく探偵なんかやっていられるわね」
小紋にヒソヒソと耳打ちをする。
「うん、確かに昔から勘が鋭くて頭も良いんだけどね。でも、かなり色々なところが抜けてるんだよね……」
「ふうん、そうなんだ……。見た目はかなりイケてるんだけど。本当に残念な人なのね……」
クリスティーナは、彼がフリーの調査人であることに納得せざるを得なかった。どんなに鳴子沢春馬が優れた素質を持った人物だとしても、これでは組織的なエージェントとしての需要があるはずもない。
「何を二人だけでごちゃごちゃ話しているのかね? そろそろ私は本題に入りたいのだが」
春馬は全くペースが乱れることもなく、漂々と話しかけて来る。
「それじゃあ仕方がない。少し兄さんの話に耳を傾けることにしますか」
「そうね。じゃあ、聞かせてもらいましょうか。その特別な情報とやらを……」
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