神々の旗印219
「これで宜しいでしょうか、マリダ女王陛下? 私は今まで秘匿事項とされた宣戦布告の情報までをも末端にまで開示するよう指揮下の者に命令してしまいました。もし、この所業にご不満があれば、私めに厳重な処罰を……」
剣崎大佐は少々自嘲気味にマリダに問うた。すると、
「いいえ、わたくしは今の判断をとても有難く思っております。剣崎大佐――」
マリダは少しだけ緊張した面持ちで答える。
「剣崎大佐……。わたくしは未だに皆様に対して、機械人形であると言う負い目を抱いております。いえ、負い目と言っても、紛らわしい疎外感であるとか、忌々しい劣等感であるとか、そう言った意味合いでの考えでは御座いません。それは……」
「いえ、それ以上何も申されますな、マリダ女王陛下――。その陛下のお考え、私どもにも痛いほど通じておりまする。しかし、その陛下の辛苦がこちら側に通じておりまするが故、私どもめも陛下の御心に惹かれておるので御座いまする。何卒、これからも私共を良き方向に導き給うことを願い申し上げ奉りまする――」
剣崎大佐は、その獰猛で武骨なヒ熊のような巨躯をくの字に折り曲げた。そして一ミリの無駄も感じさせない丁寧な一礼でその気持ちを表現した。
大佐は前提として合理主義の男であった。だが、それ以上に本質を見抜くプロフェッショナルでもあった。それだけに、今後の世界の動向に女王マリダという存在が必要不可欠だと見抜いているのだ。
人類が生き延びるために――。人類が生き残るために――。
その為には、その首領たる存在が人間であるかアンドロイドであるかということなど
(今の我々に必要な物は何事にも臆することのない団結心だ。かつてない人類以外の脅威に対して人類同士が諍い合っている場合ではない。それには、ここにおわすマリダ女王陛下始め、様々な力を持った人材が要る。そう、この目の前に居る厄介者の羽間少佐を含めてな……)
剣崎大佐にとって、羽間正太郎という存在は日常を示す平時にとってはとても厄介極まりない存在である。がしかし、このような非日常を形どった有事の際には極めて必要不可欠な存在であることを大佐は認めていた。
(我々の未来は、この男をどう活かすかによって命運が分かれるだろう。情けない話だがそれは事実なのだ。マリダ陛下がこの男のことを心底頼られておられるようにな。我々はこれからの展望をさらなる覚悟で立て直さねばならぬ――)
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