神々の旗印213
「そうじゃ。しかし、お主が驚くのも無理もない。なにせ、この技術は今の基礎科学とは余程系統が逸脱しておるでな」
「な、なるほど……。つまり、こりゃあ
「うむ、いかにもそうじゃ」
「しかしよ、今更こう言っちゃあ何だが……何だか俺ァ、まるでキツネにつままれた気分だぜ……」
「なるほど、キツネにつままれた気分か。うむ、その気持ちも分らんではない。これもいつの時代もそうじゃったから
「へへっ、てえことはよ。今の弱り切った俺を強引に
「けっけっけ。全くお主と言う奴は……。いかにも、いかにもそうじゃ。その昔、儂らも焦っておったから喃。適性者を見つけては備蓄として相手の了解も得ずに強引に確保したまでは良かったが……」
「いざ、蘇生してみると、その時点で拒否を起こされて、かえって手間を食ったってわけか?」
「うむ、その通りじゃ。儂らは何も、相手をまやかしに掛けてまでして事を起こしたくない。なぜなら、儂らの目的はそこにはないからじゃ」
「そうだな。もし、適性者をこちらに都合の良い中身に変えちまった時点で、それはもう〝適性者〟の殻を被った
「ふむ。儂は儂らの意思を純粋に受け継いでくれる才能を欲しているだけなのじゃ。もし、儂らの意思を受け継ぐだけなら、今流行りの電気からくり人形で十分だから喃」
「電気からくり……。ああ、アンドロイドのことか。まあ、それならそれでもいいかもしれねえ」
「しかし、儂らの目的は人類の進化じゃ。いくらからくり人形が進化したとて、それは目的などではない」
「なるほど……。なかなかいい線行ってんじゃねえか、婆さん……いや、源太郎博士!」
「ということは、お主! 儂らの要求を受けてくれるのか?」
「い、いや……それとこれとは別の話さ。なんて言うか、俺ァ昔から俺が俺でありたいんだ。源太郎博士。アンタの知識や知恵や経験に興味が無いわけじゃねえけれどもよ、俺は俺と言う可能性に賭けてみたいんだ。この世に生まれて来た一個人としての可能性にな」
「ふむ、お主ならそう言うと思うとった。これは儂の経験則じゃが、お主は儂らが目を付けた時点で、そう言う奴だと体から意志の力が滲み出しておったわい……」
老婆――いや、鈴木源太郎と融合したお絹は、いかにも寂しそうな表情で正太郎を見つめた。
その時、正太郎はこの老婆の表情こそが、今までの壮大な話が真実であると確信出来たのであった。
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