神々の旗印212
「目的かえ?」
老婆はそこで言葉を止めた。さすがに一言で言い笑わすのが困難だからであろう。
しかし、正太郎としてもそれを聞かずに承諾するわけにはいかない。なにせ、事は重大なのだ。
「なあ、若造……。お主から見て、今の世の中をどう思う?」
「どう思うって……、随分あっけらかんとした問い
「それは分かっておる。しかしな、若造……。
「ああ、それはもう理解した。確かにそこはアンタの言う通りだと俺も思うよ。その知的活動に対しての寿命の短さというやつの話な……」
「そこでじゃ。儂は儂らの組織の技術を使って、全ての人類にこれを応用したいと考えておる」
「つまり、あれか……。アンタらのように知識も知恵も経験も一切合切他人に引き継がせることに因って、その
「そうじゃ。それが儂……いいや、儂らの目的なのじゃ」
老婆が真剣な眼差しを正太郎に送る。
正太郎は半ば起き上がった体勢で腕組みをしつつ、
「確かにそりゃあ壮大だわな。アンタは、それをあの時代に考えついて行動に移してたってわけか……」
「その通りじゃ。儂はな、この儂の側近であった新納と共に、いつの世も変わりばえのせぬ愚かな浮世を憂いておった。何かこの世に天災などが起これば、民はその時だけは手を取り合うこともある。しかし、それも一時じゃ。人間という生き物は、のど元過ぎれば熱さも忘れてしまう。それは如何なる時代でもそうじゃった……」
「で、アンタは何をしたんだ?」
「先ず、あらゆる文献や書物、そして各地に密かに伝わる秘術の研究に没頭した。そして作り出したのがこれじゃ」
老婆は、隣りに居る新納貞興に目で合図すると、貞興は一つの細工箱を差し出した。
「これは、バツバツの秘術箱と申しまする」
貞興は、それを丁寧な手さばきで箱の中身を正太郎に見せた。
「バツバツの秘術箱……だと?」
それは黒漆塗りの一般的な三段重ねの重箱程度の大きさの箱だった。しかし、その中身は何やら現代ではお目に掛からなそうな怪しげなからくりが施されている。
「これが儂が最初に作った〝宝珠伝達装置〟の原型じゃ」
「ほうじゅ伝達装置?」
「そうじゃ。
「こ、これが……?」
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