神々の旗印190

 三人が途方もない数の人間もどきを相手にしていると、そのうち第七方面部隊の本隊が到着してその一層に掛かり始めた。

 第七方面部隊のその内容とは、フェイズウォーカー中隊その数三十二部隊。そして、七尾大尉率いる整備部隊や補給部隊、その他衛生部隊に通信部隊などが主力になっている。剣崎大佐は、そんな命知らずの勇猛果敢な各部隊を引き連れてこの最前線までやって来たのだ。それは、この場所に何らかの謎があると睨んでの事だ。

 彼ら本隊は、即座に赤い巨人の腹から湧き出て来る〝人間もどき〟の制圧に従事した。

 人間もどきは、本隊の各種フェイズウォーカーが装備している40mm滑空銃を打ち鳴らすと、その爆音にいやが上にも興奮し、その不気味な色をした羽を打ち広げ牙をむき出しにして突進してきた。頭の横から反り出した大きな二本の角は半ば真っ赤に充血し、不気味な閃光を放ちつつフェイズウォーカーの装甲板をガリガリと掻き切ってはそれに頭を叩きつけ、命を惜しむ様子もなく特攻を仕掛けて来る。

 どうやらこの人間もどきという存在は、相手が強ければ強いほどそれなりの反抗を見せるらしい。反抗こそが彼らの命の原動力なのである。

「聞こえるか、剣崎大佐!! こちら羽間正太郎。どうやらこの連中は、人間の誇大妄想を現実化してしまう力を有しているらしい。それが証拠に、うちの小隊の隊員が一人やつらにそそのかされちまった!! そのお陰で今やこの大地はこの有様ですぜ!!」

「うむ、相分かった。こちらもそれは確認済みだ。話としてはとても信じ難い事象だが、どうやら貴様の見立ては現実として受け止めるしかあるまい。このような過酷な任務、大変ご苦労であった、羽間少佐。ここからは、我ら第七方面部隊の本隊が引き受ける。早々に引き上げるがよろしい」

「ああ、そうさせて頂くぜ、大佐。何せこっちは相棒が土に埋まって丸腰だからな」

「了解した。至急、整備班と衛生班をそちらに向かわせる。あと、それとな……」

「それと? それと何なんです、大佐?」

「ああ、もう一人、貴様に会わせたいお方をお連れした。どうしても貴様に会いたいと仰られて、俺も困ってしまっていたのだがな……」

「この俺に会いたい人? そりゃあ一体……!?」


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