神々の旗印189

 同じ立場、同じ戦略を立てる者にとって、互いに余計な言葉など要らぬ。羽間正太郎は、今回のこの作戦指令がただならぬものであることを察知していた。そして、この一件が今後のヴェルデムンド世界の未来を占う大事な出来事になるだろうと理解していた。それは剣崎大佐にとっても同じことで、先の凶獣ベロンの大量襲撃という、未曽有の過酷な事象がそれをまざまざと物語っていたのだ。

「そして地球からの核攻撃ともなりゃあ、事態はどちらにせよ深刻極まりねえことは確かだってもんだぜ。んったく、俺たちの未来あしたは一体どこに向かって進んでいるって言うんだよ……」

 正太郎は、思わずレーザーソードを振りながら溜息をく。

 そんな折――

「おおい! 少佐殿! 背骨折りの少佐殿ォ!!」

 と、大部隊から先行する一台の中型ホバーバギーの荷台の上に、少しだけテンションが高めの人物があった。その人物は大仰に両腕を振り回し、野ウサギのようにピョコンピョコン飛び跳ねている。

「お、おお! ありゃあ七尾大尉だ! こんな最前線くんだりまで整備部隊の生き字引のお出ましか!?」

 それは正太郎にとって渡りに船である。なにせ、彼ら小隊の全員の機体が戦闘不能に陥ってしまっているのだ。これほど力強い味方などいない。

「ほらよ、マドセード、エセンシス。これが俺のこのバカ騒ぎを起こした意味だ。ここまで荒れ果てちまった大地に、目印地となるもんはどこにもありはしねえ。このバカでかい巨人にしたってお寝んねしちまっては、遠くからは索敵不能だからな」

「それでこんなことを……。でも、ちょっとこれはやり過ぎでゲス!」

 未だ二刀のレーザーソードを振り回しながらマドセードは渋い表情をする。そして、

「ほら、兄ちゃん、手を止めないで! 兄ちゃんの手が鈍くなっちゃうと、風下のおいらの方に敵がわんさと……!!」

 エセンシスは、そのひょろ長い身体とひょろ長い手足を縦横無尽に振り回して、雪崩来る敵を叩き斬る。

「二人とも!! もう少しの辛抱だ。もう少し我慢すれば本隊の連中がここに到着するから、それまで頑張るんだ!!」

「もう、言い出しっぺのやりだしっぺの背骨折りが、何を言うでゲスか!?」

「そうだすです、背骨折りさん!! 事を綺麗にまとめようったって、そうはいかないだすですよ! このツケは後でたんまり払ってもらうだすですからね!!」


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