神々の旗印171

「くっそう、もう怒ったぞ! そっちがその気なら、俺は今から本気でお前を潰してやる!! 長いようで短い付き合いだったが、早雲……お前がこの俺を本気で怒らすからいけないんだぞ!!」

「あらまあ、何を言い出すのかと思えば、今までが本気でないとはとても面白い戯言ですね、ユートさん!? そうやって減らず口をいつまで叩けるものでしょうか」

「減らず口だと!? これでもそんな事が言えるのか!?」

 言うや、勇斗は大剣を頭上でグルングルンと豪快に振り回し、それを空に向かって投げつけるのであった。

 すると、上空を囲うように蔓延はびこっていたつる植物の巨大な草花たちが、ものの見事に砕け散って風となり、目の前に居た勇斗の姿を一瞬のうちに隠してしまったのだ。

 しかし、

「なるほど、どうやら隠し身の術というわけですね。あなたを今まで単なる単純能無しかと思ったけど、それなりに何か戦略めいたものを考えているとは思いもよりませんでした。でも、今更そんな誰もが考えそうな手を持ち出されても、どうにもこちらとしては……」

 早雲はそう言いながらせせら笑いつつ、その辺りに倒れていた巨木を、その小さな身体でむんずと抱え上げ、

「やっぱりあなたは、何事も中途半端なんですよ。お子ちゃまユートさん」

 そう言葉を放つや、彼女の方も巨木を頭上に持ち上げてグルングルンと回転させる、

 すると何と、その巨木が回転した風圧が次第に激しく気流の波を起こし、やがてまるで巨大な竜が天に駆け昇るがごとく豪快な竜巻が起こったのだ。

「ば、馬鹿な! 早雲ちゃん、無茶苦茶だ!!」

 それを見ていた正太郎は、思わず驚愕の声を上げて制止しようとする。

 だが、彼女はそれに一切聞く耳を持たず、さらに回転を上げて振り回すものだから、その竜巻が地上から天をも貫いて一直線に暴れ出したのだ。そして、その豪快な竜巻が勇斗の起こした草花の気流の波を全て飲み込んだ時、

「うおおあああっ!!」

 何と、二つの気流同士がぶつかり合ってまるで核爆発でも起こしたかのような大震動が空全体を揺るがした。

 何という地鳴りだろう。何という雄叫びだろう。それはまるで、雷鳴が目の前で空気を張り裂かんばかりの猛爆発である。


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