神々の旗印152


 正太郎は、無数の人影相手に吶喊とっかんした。

 相手は何の武器も持たずに素手で襲い来る。しかし、相手に作戦など何もない。戦略などどこ吹く風と言ったように、彼らは正太郎目掛けて歩み寄り、正太郎の喉元目掛けて力尽くで彼の首ねっこを引きちぎろうとする。

 正太郎はありったけの弾を込めて銃を撃ちまくった。羽の生えた人類の額に次から次へと穴が開いた。そして、正太郎がレーザーソードを縦横無尽に振り回せば、羽の生えた人類の頸動脈に次から次へと亀裂が出来上がった。

 羽の生えた人類はバッタバッタと薙ぎ倒されて行く。そしてそれら天上に吹き上がる血しぶきは、まるで夕日に映えたススキの野原のようにその場空間を次から次へと真っ赤かに染め上げて行く。

 しかし羽の生えた人類は、どんなに倒されても切られようとも、また底なし沼から湧きいずるあぶくのように次から次へと赤い巨人の表面から現れる。

「へへっ、満たされねえやからの憎しみは、とことん際限がねえぜ……!!」

 正太郎はやせ我慢ついでに憎まれ口を叩く。流石の彼でさえ、この赤い巨人に住み着いた人類もどきの執念がこれ程までのものと思わなかった。

 しかし、彼らにとってこの赤い巨人は彼らが唯一寄り添える世界であり、彼らにとっての唯一の楽園でもあったのだ。そんな彼らの居場所を真っ向から否定した正太郎の存在は、まさに彼らにとっての悪魔。いや、それ以上の破壊神でしかない。

「お前らにどんな理由があったかは知らねえが、この俺はこの俺の信念でお前らのそのひん曲がった根性を叩きのめす!! そして、この世界を破壊する行為を食い止めて見せる!!」

 とは言ったものの、おおよそ赤い巨人の全高は3000メートルを越している。その倒れた巨体の足元から彼は駆け上がり、今やっとの思いで腰の部分まで辿り着いたが、こうまで無限に敵に襲い掛かられたのでは溜まったものではない。

 

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