神々の旗印151

   


 もう一度コンソールパネルを確認するが、烈太郎はまだオーバーロードダウンしたままである。そして、烈風七型の機体損傷は誰の目から見ても活躍を望めるものではない。

「烈……。テメエはその場でこの俺の死に様を看取ってくれよ。誰だって人知れず死にに行くのは寂しいものだからな……」

 正太郎は言うや、胸のペンダントトップを握り締めた。そして、腰ベルトからレーザーソードを抜き出し、それを全開にさせる。彼は生身の体一つで特攻を掛けようと言うのだ。

 狙いは赤い巨人の頭部である。眉間にはりつけにされたあの女を目指す。

(奴は兎に角重要な何かを握っている……。そして、この化け物の重要な何かを知っているはずだ……)

 その謎に辿り着かぬ限り彼は死んでも死に切れるものではない。

 彼が天高く舞い上がった時に見た東京の姿。そして、死んだ者たちからなる憎しみや怨み辛みの執念――。

 そういった不確かな情報が混在した今、正太郎が確実に感じるのは、この状況がヴェルデムンドの危機であり、故郷の地球に何らかの変化がもたらせられているこというだ。

 彼はニヤリとえみをうかべると烈風七型の機体を後にした。そしてグイと顎を引き寄せて一気に駆け出す。

 右手にはM8000クーガー。左手には黄金色に輝きを放つレーザーソード。いずれも彼が戦前から愛用して止まない古き良き武器である。

「ちぃっ!! 早速おいでなすったぜ!!」

 正太郎が言葉を放つのと同時に、赤い巨人の胴体の表面から無数の人影が湧き出して来る。無論、彼に敵意を持つ怨念を有した人々の群れである。

 彼ら無数に蔓延る人影は、見た目は人であっても人ではなかった。それが証拠に、彼らの背中からは鈍い空の色をした羽が生えており、膨れ上がった側頭部からは牛の物とも羊の物とも似つかない真横に伸びた角が生えている。

 しかし、それを除けば全て我々の知る人間と同じなのだ。まるで人類と同種族と言っても過言ではないぐらいに我々人類と酷似している。

「俺には分かるぜ……。コイツらは、この赤いバケモンに寄生する人類だ。そして、俺たち人類を起源とする怨念の塊だ!!」

 

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