神々の旗印135
烈太郎が言葉を言い終えた瞬間、突如ピサの斜塔一本分もあろう巨木が彼らの機体の目の前に横殴りに飛び込んで来た。
「兄貴!! 危ない!!」
「分かってらあ!! 急上昇すっから舌咬むなよ、烈!!」
正太郎は咄嗟にスロットルを弱めると、機体の下方に飛んできた小枝に足を当てジャンプする。そしてその勢いを利用して、
「スロットル全開!! ぐうううっ……!!」
と、常人なら完全に気を失うほどの急激上昇をやってのけて見せた。と同時に、烈太郎のミニチュアアバターが舌を噛んだ姿でコックピットの床底にぐにゃりと叩きつけられる。
「おい烈!! こんな時に余裕ぶっかまして遊んでんじゃねえ!! テメエには狙撃ポイントの策定という大事な仕事が残ってんだろ!?」
「ゴメン、ゴメンよ、兄貴。オイラも今の兄貴の状態と同じ気持ちになってみたかったんだ」
「バッキャロー!! これは遊びでやってんじゃねえんだぞ!! 俺たち不条理な生き物の真似なんかやってる場合じゃねえぞ!!」
正太郎は言いつつ、飛んで来る巨木を次から次へ伝い、一瞬ではあるが赤いフェイズウォーカーの肩の辺りの高さまで到達する。
その視界は正に、彼がこの新次元へと移住して以来、初めて見る光景だった。
この世界の本当の支配者は、地球の物とは比べ物にならないくらいの巨大植物である。彼ら人類は、この程度の高度ですら制空権争いでもこの世界の植物らに勝てず、今もなお地べたのみを這いずる生活を余儀なくされていた。
そんな彼らにとって、この地上数百メートル程度からの光景を目の当たりにするのは前代未聞の行為だと考えても良い。
「お、おい、烈……!! 見たか? 今のをよ?」
「あ、兄貴……。見たよ、見ちゃったよ。こ、これが……、この世界が、ヴェルムンド……」
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