神々の旗印130


 正太郎が煽れば煽るほど赤いフェイズウォーカーはその腕を派手に振り回した。その度に巨木の立ち並ぶ密林が見るも無残な荒野と化して行く。

「おい烈、気を付けろ!! 今の奴ァ、怒り狂ったただの暴れ馬も同然だ! このままじゃ、この世界ごと木っ端みじんに破壊しちまい兼ねねえ!!」

 怒りに満ちた赤いフェイズウォーカーはその膨れ上がる怒りをかてとしてか、今確認出来ているだけでも烈風七型の全高を遙かに超え、このヴェルデムンド特有の巨木の先ですら見上げる程に肥大化を繰り返している。

「わ、分かっているよ、兄貴!! でもさ! これじゃあの機体はもう戦闘マシンなんかじゃないよ! あれは昔のテレビかなんかで見た巨大怪獣そのものだよ!!」

「その通りだ、烈!! 奴ァ、まさしく巨大怪獣そのものだ!! 自分の素直な感情を率直に表現しただけの怪獣なんだ!!」

「信じられない、信じられないよ!! こんな事が現実にあるなんてオイラにはとても信じられないよ!!」

「ところがどっこい、これが現実なんだ!! この世は理屈なんかよりも、目の前に起きている事態の方が優先だ!! テメエのちっこい常識なんかに囚われている暇なんかねえんだぜ? そら、あのでっかい巨木の切れっぱしをよく見ろ! ありゃあな、地下の海水を真水に変えてくれる俺たち人類にとって大変有難てえ木だ。その木の幹からてっぺんまで勢いよく噴出している水しぶきは現実そのものだ! それこそがこの世界の命の脈動なんだ!!」

 薙ぎ倒された巨木の根の辺りから幹に至るまで、吹き上げる大水量は天高くまで上り、やがて大粒のスコールとなって辺り一面を水浸しにさせてしまう。正にあの赤いフェイズウォーカーがまかり通った足跡は、天変地異を表したが如く元にあった大自然風景を破壊し尽くすのであった。

「兄貴ぃ! このままじゃ、マド兄ぃ達がヤバいよ! だって、あの赤の怪獣が進んで行く先には、動けなくなった三人の機体が居るところなんだもの!!」

「な、なんだと!? じゃあつまり、奴ァ最初っからそれを狙って……!?」

「それはどうか分からないけれど、兄貴が言う現実を真正面から見ればそうなのかもしれないね。それよりどうしよう! このままじゃ、あの三人の命が危ないよう!!」

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